AIに何かを頼んで、返ってきたものが思っていたのと違う。
もう一度頼み直したら、今度は違う形で違っている。同じことを頼んでいるつもりなのに、日によって出来が違う。
自分は、しばらくこれをAIの調子のせいだと思っていました。 今日は賢い、今日は雑だ、と。
1年ほど毎日使ってきて分かったのは、そのばらつきの多くは、こちらの伝え方で説明がついたということでした。同じことを頼んでいるつもりで、渡している情報が毎回違っていたんです。
このシリーズでは、実際に効いた頼み方を6回に分けて書きます。テクニックの一覧ではなく、失敗して、直した記録として書きます。

この記事で分かること
- うまくいかない原因は、3つに分けられる
- どれに当てはまるかの見分け方
- シリーズ全体の流れ
1. モデルのせいだと思っていました
1-1. 日によって出来が違う
同じような依頼をしているのに、返ってくるものの質が違う。
「今日は調子がいいな」「今日はいまいちだな」と感じることが、よくありました。
1-2. でも、記録を見返すと
あるとき、うまくいった依頼と、うまくいかなかった依頼を、並べて見返してみました。
書き方が、まったく違っていました。
うまくいったときは、条件を細かく書いています。 誰が読むのか、どういう形式にしたいのか、避けたいことは何か。
うまくいかなかったときは、一行で頼んでいました。 「これをまとめて」「これを直して」。
自分では、同じことを頼んでいるつもりでした。 頭の中には条件があったので。でも、書いていませんでした。
1-3. 相手は、こちらの頭の中を見られない
当たり前のことですが、これが実感として分かるまでに時間がかかりました。
人に頼むときは、相手が察してくれます。 「いつもの感じで」で通じることがある。前に話したことを覚えていて、補ってくれる。
AIには、それがありません。 その依頼文に書いてあることが、渡した情報のすべてです。
2. 原因は、3つに分けられます
1年やってきて、うまくいかないときの原因は、だいたい3つでした。
2-1. 基準が曖昧
いちばん多いのが、これです。
「読みやすく」「いい感じに」「適切に」「きれいに」。こうした言葉は、人によって意味が違います。
短い文が読みやすい人もいれば、多少長くても流れがつながっているほうを読みやすいと感じる人もいる。どちらが正しいということはありません。
基準が自分の頭の中にしかないと、伝わりようがない。
これについては、第2回で詳しく書きます。
2-2. 前提を渡していない
次に多いのが、これです。
同じ「文章を直して」でも、誰が読むのかで、直し方が変わります。
社内向けの報告書と、初めての人が読むブログ記事では、まったく違うものになるはずです。でも、それを書いていない。
自分にとっては当たり前すぎて、書く必要を感じないんです。そして、渡したつもりになる。
これについては、第3回で扱います。
2-3. 一度に頼みすぎ
3つ目が、これです。
大きな依頼を丸ごと投げると、全体としては形になるのに、細部が雑になります。
しかも、どこがまずいのかを探すのが大変です。塊が大きいほど、確認する範囲も大きくなります。
これについては、第5回で書きます。
3. どれに当てはまるか、見分ける

返ってきたものを見れば、だいたい分かります。
3-1. 「なんか違う」と感じる
形にはなっているが、方向が違う。
これは、基準が曖昧な可能性が高いです。相手は「これでいい」と判断して作っています。その判断基準が、こちらと違っている。
第2回を読んでください。
3-2. 的外れなものが返ってくる
そもそも、何を求めているか伝わっていない。
これは、前提が渡っていないときに起きます。相手は、こちらが何をしようとしているか知りません。
第3回を読んでください。
3-3. 全体は良いが、細部が雑
大枠は合っているのに、細かいところが適当。
これは、一度に頼みすぎです。範囲が広いほど、一つひとつが薄くなります。
第5回を読んでください。
3-4. 前に言ったことを忘れている
さっき決めたはずのことが、反映されていない。
これは、会話が長くなったときに起きます。原因が別なので、こちらも第5回で扱います。
4. 実際にあった失敗
具体例を1つ書きます。
4-1. 「読みやすく整理して」
ある文章を直してもらおうとして、こう頼みました。
この文章を、読みやすく整理してください 返ってきたものは、短く切り詰められていました。
自分が欲しかったのは、もう少し説明を足して、流れを分かりやすくしたものでした。逆の方向です。
4-2. 何度もやり直した
「もう少し丁寧に」と頼み直しました。今度は、冗長になりました。
「簡潔に」と言えば削られ、「丁寧に」と言えば増える。行ったり来たりして、時間だけが過ぎました。
4-3. 悪いのは、相手ではなかった
途中で気づきました。
自分が、何をもって「読みやすい」と考えているのかを、決めていませんでした。
決めていないものを、伝えられるわけがありません。相手は、毎回こちらの意図を推測して、そのつど違う答えを出していただけです。
この経験が、このシリーズの出発点になっています。
5. このシリーズの流れ
全6回で、段階的に進みます。
入門編(第1回〜第3回)
AIを使う人全般が対象です。専門的な知識は要りません。
第1回 この記事。原因を3つに分ける。
第2回 「いい感じに」をやめる。判定できる形で書く方法。
第3回 前提を先に渡す。何を書けば伝わるか。
実務編(第4回・第5回)
仕事で使う方が対象です。間違いが混ざると困る立場の方向けです。
第4回 返ってきたものを疑う。仕事で使うなら、ここがいちばん重要だと思います。
第5回 長い会話との付き合い方。忘れられる、古い指示が戻ってくる。
開発編(第6回)
コードを書かせる方が対象です。
第6回 仕様の渡し方、レビューのさせ方、テストの扱い。
6. 先に、いちばん効くものを1つ
全部を読む時間がない方のために、1つだけ書いておきます。
「いい感じに」「適切に」「きれいに」を使わない。
この3つの言葉を、判定できる形に言い換えるだけで、返ってくるものが安定します。
× 読みやすくまとめて
○ 1つの段落は3文まで。専門用語が出たら、その場で説明を足して
× 適切な長さにして
○ 全体で800字前後にして
× きれいに整理して
○ 見出しをつけて、項目ごとに分けて これだけで、やり直しの回数が減ります。
詳しくは第2回で書きますが、今日から試せます。
7. 効かない場合もあります
正直に書いておきます。
伝え方を直しても、うまくいかないことはあります。
そもそも難しい依頼、情報が足りていない依頼、AIが苦手な種類の作業。そういう場合は、頼み方を変えても限界があります。
ただ、多くの場合は、伝え方で説明がつきました。
「AIが賢くないから」と結論づける前に、自分の頼み方を見直してみる価値はあると思います。少なくとも自分の場合、そこに原因があることのほうが多かったです。
まとめ
- 返ってくるものがばらつく原因の多くは、伝え方にある
- 相手は、こちらの頭の中を見られない。 書いたことがすべて
- 原因は3つ。基準が曖昧/前提を渡していない/一度に頼みすぎ
- 「なんか違う」→ 基準が曖昧(第2回)
- 「的外れ」→ 前提が渡っていない(第3回)
- 「細部が雑」「忘れている」→ 頼みすぎ・会話が長い(第5回)
- 今日から試せるのは、「いい感じに」を判定できる形に言い換えること
- ただし、伝え方を直しても効かない場合もある
次回は、「いい感じに」をやめる方法を扱います。判定できる形とは何か、どう言い換えるか。このシリーズでいちばん効く回だと思っています。
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。


