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映画『わたしの物語』障がい者として生まれた一人の女性が自らの姿より現代社会の在り方を問う

生きづらさを抱えて
(C) HOT PROPERTY ITAOT LIMITED 2023
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両足に障がいを抱えた一人の女性の半生より、知られざる「障がい者の本音」に迫り、現代社会における障がい者の在り方を改めて問う映画『わたしの物語』が公開されます。

ドキュメンタリーでありながら、一人の女性の生きざまをありのままの事実とともに、自身の複雑な気持ちの揺れで文字通り「物語」として表現されたこの作品。

彼ら障がい者が生きることへの、本当の苦しみ、悩みを訴えているメッセージ的な作品でもあり、新たな社会を築いていく上では避けて通れないテーマに迫った作品であるともいえるでしょう。

今回はこの作品の紹介とともに、改めて「障がい者」という人の立場や社会的な向き合い方に対する新たな論点を考えてみたいと思います。

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映画『わたしの物語』とは

作品概要

映画『わたしの物語』フライヤー

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

両足に障がいを持ったまま生まれたイギリスの女性監督エラ・グレンディニングが、自らの人生を綴るとともに自分らしさとは何かを模索する旅路をさまざまな出会いと合わせて記録したドキュメンタリー映画。

作品は2023年サンダンス映画祭ワールドシネマ部門に正式出品、クラクフ映画祭で最優秀ソーシャル・イシュー映画賞を受賞、ミルウォーキー映画祭で審査員特別賞を受賞、さらに日本で行われたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023でも上映されました。

あらすじ

映画『わたしの物語』

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

生まれつき足の障がいを抱え生活を送る20代のグレンディニング。股関節がなく大腿骨が短いという障がいを持って生まれながら「障がい者である」ということを意識せず伸び伸びと育てられた彼女でしたが、成長が進むにつれ周りの視線が気になり、彼女は自分を肯定しつつも「ほかの人とは違う」感覚に常にさいなまれていました。

そのため彼女は、まったく同じ障がいを持つ人をSNSで探し、いまだ障がい者差別がはびこる社会において自身の思いの正しさを探るべく行動を起こします。

その行動の先では、似たような境遇を持った人たちとの出会いや、撮影期間中の予期せぬ妊娠・出産と子育て、自閉症である親友ナオミとの語らい、さらにシングルマザーとして彼女を育てた母、そして父への問いかけなどを通して、彼女は自分が思いもしなかった新たな世界と自分を認識していきます。

社会的な「障がい者」という立場認識への疑問

映画『わたしの物語』

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

障がい者などの社会的弱者という立場を扱ったドキュメンタリーは、これまでもたくさんの作品が発表されてきましたが、この作品はその障がい者が自ら自身のステータスについて問うた作品となっています。

ドキュメンタリーは客観性のある視点を求められることが多く、監督自身が自らの特徴に触れるという作品は、ある意味難しいテーマであるといえるでしょう。

本作を手がけたグレンディニング監督は自らの姿より「障がい者の思い」について非常に興味深い視点を描き、客観的な視点自体に疑問を投げかけることで、まさに文字通り「わたしの物語」より興味深い論点を提供しています。

その大きなポイントは、障がい者と呼ばれる立場の人々の自意識に迫っている点にあります。

映画『わたしの物語』

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

成長するにつれ自身の姿に対し、人の目が気になるようになりながら、自分を否定せず受け入れたいと考えるグレンディニング監督。

そんな彼女らに対し、たとえば専門医たちの手を差し伸べるべくアドバイスは、彼女らの境遇を「どうやったら自分たちの側に近づけられるか」という考えに基づいていると彼女らは考え、現社会の「障がい者」という立場の認識についてに言及しています。

「障がい者」と呼ばれる人たちは確かに社会生活を送る上でさまざまな障壁を抱え、不便な場面に出くわすことも少なくないでしょう。

しかし彼女らが持つその特徴を本当に「悪しきもの」というポイントだけでとらえてよいものなのか。答えを出すことが非常に難しい問題であることを本作は提起しているわけです。

冒頭にグレンディニング監督が素敵なダンスを披露する姿がありますが。このダンスの意味も物語が進むにつれより深く感じられていくことでしょう。

健常者と変わらない「障がい者」の不安と葛藤

映画『わたしの物語』

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

また本作はグレンディニング監督のパーソナルな意見にもうまく言及し、彼女らが持つさまざまな不安、葛藤にも迫っています。

物語中では彼女の家族に対するインタビューも行われ、自身の母親に対し「なぜわたし一人しか生まなかったの?」などといった辛辣な疑問にもありのままに答えるシーンがあります。

さらに自身の足を手術により改善させる、という専門医のアドバイスに対して新たな希望を抱く一方、「自分を否定したくない」という自分の意識とのはざまに悩む表情を見せたりもします。

その一方で、そんな彼女がたどり着いたブレークスルーの糸口は「自分と同じ境遇を持つ人間と対面する」というもの。

映画『わたしの物語』

(C)Hot Property ITAOT Limited 2023

自身を受け入れるも、さまざまな障がい者差別を受け傷ついてきたグレンディニング監督ですが、この目的は自分と似たような人間と対面することで、自分が孤立した人間ではないと認識するためのものであるようにも見えます。

結果的に似たような容姿の人々に出会った彼女は、その目的以上に自身だけでは及ばなかった考えをさまざまに受け取り、新たな道筋を開くカギを手に入れました。自閉症がある彼女の友人とのふれあいを含め、こうした光景は改めて人とつながっていくことの深い意味を感じさせます。

一方で彼女自身の恋人との出会い、妊娠と出産というある意味「健常者と同じ出来事」は、グレンディニング監督自身の「わたしの物語」の客観性を一層強めている印象があります。

作品を眺めていると、健常者と呼ばれる人々が及びもしなかった思い、考えがさまざまな場面で見られ、障がい者たちの社会における新たな生き方を改めて考えさせられる作品であります。

映画『わたしの物語』は2024年6月22日(土)より東京・新宿K’s cinemaにて公開

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