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姫からレディへ│彼の両親と映画リトル・マーメイドを観た話

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映画館の席順はお義母さん、彼氏、私、お義父さん。緊張しながら見た映画「リトル・マーメイド」の物語は、周囲から応援される自由奔放なプリンセスが羨ましい一方で、「感謝と謙虚さを持った大人の女性になりたい」とこっそり心のメモに記す。そうだ、私はもう小さなお姫様ではないのだから。

働きづらさを抱えつつ、普段はゆるく会社員をしている、お喋りイラストレーター夜くまのエッセイ連載「繊細とゴキゲンのすきま」、第6回です。

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初対面だった彼の両親と映画館へ

「なぁ、日曜空いてる?」

「明日?空いてるよ」

「リトル・マーメイド、見に行かない?」

リトル・マーメイド|実写映画/ブルーレイ・DVD・デジタル配信|ディズニー公式
映画『リトル・マーメイド』公式サイト。ブルーレイ・DVD・MovieNEX・デジタル配信最新情報のほか新作ディズニー映画、海外ドラマ、デジタル配信など、豊富な作品ラインナップをお届けします。ディズニー公式 Disney.jp

「おーいいね」

「俺の両親が彼女も誘ったらって言うんだよ」 

「えっ!」

付き合ってそろそろ4年目になる彼氏のご両親に初めて会う日に、まさか映画館で陽気な海の仲間たちの歌声を聞くことになるとは思わなかった。

なんでも、新聞屋さんがくれた映画チケットを4枚くれたとか。

ヒィヒィ緊張しながら、日曜の午前中に急いで手土産を買いに行って、

「なんでもいいし、なんなら用意しなくていい」と言う彼氏から、無理やり聞き出した「しいて言うなら、緑茶とか2人とも喜ぶかも」という声を頼りに、

よく分からないから、百貨店のおばちゃんが機嫌よく勧めてくれた新茶と、難しい名前の、きっと美味しい定番の緑茶のセットを、言われるがままに購入して、

先に彼氏と2人で合流することになっていた待ち合わせ場所へ向かった。

「安心して、こわくないから」

緊張してブルブル震える私を案じて、小さい子に言い聞かすように、何度も言った。

「みんな君を歓迎してる。味方だから大丈夫」

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あなたに会えて嬉しいわ

映画館へ行く前に、食事をするという。30分程度の軽い食事。

あんなに緊張しながら食べた回転ずしはない。

手が震えて、回る皿を取る度に、お寿司を落として、醤油をひじで倒し、せっかくの食事の場を台無しにするのではないかと不安になった。

彼の両親は、優しい顔で、もはや半泣きになって震える私の拙い話を、ニコニコ聞きながら、「たくさん食べてね」「好きなの注文してね」「デザートもいかが」と話しかけてくれた。

後日、「彼女さんは緊張してあまり食べられてなかったみたいだけど、お腹いっぱいにちゃんとなったかな」とお義父さんから彼氏くんにLINEが届いたらしい。

食事を終え、映画館につくと、お義母さんが、両手に抱えるほど大きなポップコーンを買ってくれた。

「私もね、ディズニー、大好きなの」

「あなたと一緒に見れて嬉しいわ」

嬉しくて、また泣きそうになった。

応援されるお姫さまの魅力

その日、見に行ったリトル・マーメイドのテーマは「ダイバーシティ」になるんだろう。主人公の設定や、物語のエンディングなどは現代風にアレンジされていた。

本編についての感想は、いつものごとく、実際に自分の目で鑑賞いただくこととして、今回の記事で語りたいのは、「主人公アリエル姫が、周囲から応援される理由」である。

ナナメな見方をすれば、なかなかの、じゃじゃ馬なプリンセスである。

海の探検に夢中になって、年単位の重要な集会をすっぽかす。

海の世界を司る父の言うことを、とにかく聞かない。全然、聞かない。

いかにも危険な叔母から提案された、うさんくさい交渉に乗って、後先を考えずに自分の声と命の保証を預けてしまう。

すべては愛する王子と、人間界への憧れの一心で。

もっと自分と周囲を大事にしてくれ、プリンセス。

こうやって書き連ねていると、とにかく危なっかしいから、周囲は目を離せない。

最初は心配で、ベビーシッターのように監視しているんだけど、

次第に、彼女のあまりにも純粋で、一途な気持ちを応援するようになる。

ザブンとダイブして海底のパーティーへ

人間の大人は、そうは簡単に、海に飛び込めない。

浮き輪が、命綱が、酸素ボンベが、大きなタオルが必要だ。

だって、こわいし。

ダサいの、いやだし。

怒られるの、だるいし。

だからこそ、それを軽々とやってのけてしまう、小さなお姫様に、自分の遠い幼少期を重ねてか、思わず「やれやれ」と応援してしまう。

でも、映画館を出た後の私は、残念ながらアラサーの女性であり、

どんなに精神年齢が幼かろうと、世間的には大人であり、

働いて、納税して、上司に業務進捗の言い訳をして、受話器を片手に頭を下げ下げ、クレーム対応だってする。

昔、思い描いていたよりは、ずいぶんと、しょぼくて、平凡なサラリーマンだ。その日常には、海底のパーティーへの招待状は届かない。

でも、私はこんな日常が、意外と好きで、

「やれやれ」と応援される有難みに感謝する謙虚さを持っていたいし、

時々は自分だって恩返しで、大切な人たちを支えたいし、

冒険はできないけど、時々、知らない道をわざと選んで、会社から1駅歩いて帰ったりする。

その途中で、街頭に照らされたアスファルトの美しさに小さく見惚れたりもする。

「あら、リトル・マーメイドのグッズが売ってる!買ってあげるわよ!」

お義母さん、ありがとうございます。

連れてきてくれて、優しい顔で私と会ってくれて、可愛がっていただいて。

これから、どうぞ末長く。

素敵な、大人の女性になります、私。

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