「ひきこもり経験者が体験を語るシリーズ」です。4回目はひきこもり時代の後期編です。いわば、抜け出す直前の時期となります。
結論からお話しすると、ここは落とし穴があります。
この時期は、希望に向かって前向きに歩いているかのように思えますが、必ずしもそうとは限りません。調子の良い日と、悪い日を繰り返しながら抜け出していくのです。
その過程は、支えるご家族にとっては大きな不安になります。
- 回復に向かったと思えば塞ぎ込む
- 昨日は笑って話していたのに、今日はちょっとしたことで怒り出す
今回お話しする内容をあらかじめ知っておくことで、心の準備ができるようになります。来るべき「抜け出し期」に、適切な対応ができるように備えておきましょう。
ひきこもり時代(後期)にとっていた具体的な行動
「ひきこもり」の後期段階では、こんな行動をとっていました。少し長いですがご了承ください。
- スマホゲーム以外にも興味が出始める(料理など)
- 料理家のYouTubeを見ながら真似して作るようになる
- インターネット上のゲームコミュニティーに参加する
- ゲームコミュニティーで友人ができる
- ゲームが上達しインターネットの世界で称賛される
- YouTubeでゲーム配信を始める
- 食材の買い出しに行くようになる
- 買い物に行くとご褒美の発泡酒を買ってもらえる
- 出かけるための外出着を購入する
- 伸び放題の髪を自分で切るようになる
- 身だしなみを整え始める
- 歯を磨くようになる
- ずっと寝たきり生活だったため身体中が痛くなる
- 家に引きこもっていることが不安になり夜中に突然家出をする
- 自分の前向きな気持ちを少しでも批判されようものなら荒れ狂う
一言で言うなら「興味や関心が戻ってくる時期」だったと思います。人生を諦めていた状態から抜け出した時期です。行動量に比例して気力が戻っていくような感覚でした。
今思うとこの時期は「失敗経験」が重要に思えます。「質の良い失敗」「リスクの低い失敗」を重ねることでストレス耐性が身につきました。また、うまくいかなかった場合の対処法を身につけることも出来ました。
その失敗のダメージにより再び心が折れてしまうこともありますが、それでも大切な学習です。赤ちゃんが転びながら歩行できるようになるのと同じです。
ここで良くない周囲の対応は「失敗しないように先周りすること」です。せっかくの学習のチャンスを奪わず、見守りや応援する形が良いかと思います。
そのときの気持ち
次は、後期段階の心理状態をお話しします。当時、私はこんな気持ちでいました。
- ひきこもり以降、初めて人に認められて嬉しい(ゲーム)
- 外に出れるようになった自分を家族が喜んでくれて嬉しい
- 「ゲームが上手い」と褒められて自己肯定感が生まれる
- 褒められたことに対して「もっとできるようになりたい」と思うようになる
- 外に出ると人の目が怖い
- 人が多い時間帯の外出は避けたい
- 身だしなみを整えないまま出かけると、人の目が気になる
- 身だしなみを整えて出かけたら、人の目がそれほど気にならなくなった
- 体力や筋力が衰えすぎて健康面が不安になる
- どんどん目が悪くなっているので、この先「失明するのでは?」と不安になる
- 自分の前向きな気持ちに水をささないで!
個人的には「身だしなみを整えたこと」が良かったように感じています。当時、私は髭ぼうぼうで虚な目で歩く自分が嫌いでした。そんな姿が鑑に映るたびに気が滅入っていました。
そして、そんな私を見た人は「生きる価値のない人間と思っているに違いない」と感じていました。それが悪循環となり人目を避けていた部分もあります。
見た目を整えていくことで「対人恐怖」が薄れていきました。
ヒントになるようなお話し
ここからは、ひきこもり時代の自分を振り返って思うことです。
出来ていたこと(ここに注目し大きくしていくことが望ましいです)
- 人が少ない時間帯に買い物に行く
- 興味が湧いたことに取り組んでみる(YouTube投稿、料理など)
- 身だしなみを整える
出来なかったこと(ここに囚われすぎないことが大切です)
- 感情のコントロール
- ゲームをやめる
- 昼夜逆転の生活をやめる
しないほうが良かったこと
- 家族にネガティブな感情をぶつける
- 身だしなみを整えずに外出する
したほうが良かったこと
- できる家事をする
- 興味あることをやってみる
- 身だしなみを整える
- 良質な失敗経験を積む
まとめ
この後期段階は、私の家族は「1番きつかった」と語ります。
理由は、
「調子が良いと回復を期待するから」
「悪いなら悪いで安定してくれたほうが気が楽」
「不安定な状態で出かける方が不安だった」
回復に向かうと期待していたら、翌日は気分が塞ぎ込こみ引きこもってしまう。この気分の波に振り回されて、家族は辛かったようです。
うつの回復も同じような形跡を辿ると言われています。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、回復に向かうそうです。ひきこもりから抜け出す形跡も、それに似ているように感じました。
一直線に回復に向かうことが望ましいですが、これは経験上かなり稀だと思います。一喜一憂しないことがポイントです。
支える家族としては「このような波を繰り返しながら抜け出していく」ということを心の片隅に置いておきましょう。