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映画『息子と呼ぶ日まで』 LGBTQ+課題の新たな一歩を示す「トランスジェンダーを取り巻く人々の表情」

生きづらさを抱えて
(C)息子と呼ぶ日まで製作実行委員会
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一人のトランスジェンダー男性をめぐり揺れ動く周囲の人たちの感情を繊細に描いた短編映画『息子と呼ぶ日まで』が公開されます。

周囲との軋轢に悩む一人のトランスジェンダー男性を中心に、彼の身に起こる一つの事件から現代のLGBTQ+にまつわる社会課題に対し新たな視点を提示するこの作品。

キャストには今回演技初経験で自身実際にトランスジェンダーである合田貴将、かつて監督としてLGBTQ+をテーマとした作品を発表、俳優としても活動している黒川鮎美、ベテラン俳優の升毅らを起用。尺の短い作品ながらひときわ光る印象を作り上げ、強いメッセージ性を放つ物語を作り上げています。

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映画『息子と呼ぶ日まで』とは

作品概要


トランスジェンダーとして生まれた一人の人間を中心に、家族や恋人など周囲の人間が葛藤しながらも偏見に向き合う姿を描いた短編映画。

本作を手がけたのは、同じくLGBTQ+をテーマにした短編映画『手のひらのパズル』を発表し高い評価を得た黒川鮎美。監督・脚本を担当するとともに劇中にも出演を果たしています。

また主演を演技初経験の合田貴将が担当しています。合田はトランスジェンダー当事者を対象にしたオーディションで本作の主演に選ばれました。また他にも『八重子のハミング』『THE LAST COP/ラストコップ』『大綱引の恋』などの升毅、『きのう生まれたわけじゃない』『おんなの河童-UNDERWATER LOVE -』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』などの正木佐和、『ボディ・リメンバー』『夕方のおともだち』『痴人の愛 リバース』などの鮎川桃果らが名を連ねています。

公開年:2024年(日本映画)
監督・脚本:黒川鮎美
出演:合田貴将、正木佐和、鮎川桃果、秋吉織栄、黒川鮎美、高橋璃央、鮫島れおな、夢香、荒牧奈津希、升毅ほか
配給:BAMIRI、STELLA WORKS

あらすじ


現在恋人の絵美と同棲生活を送り、不動産屋で働くトランスジェンダー男性の翔太。

カミングアウトをきっかけに故郷の父と疎遠になっていた彼は、あくまで男性として過去を隠し生きていく中で、要所に感じるトランスジェンダーへの偏見に苦しみながら日々を過ごしていました。

翔太の父もまた、息子がトランスジェンダーであるという事実に違和感をおぼえながらも、どうにか子供の気持ちを理解しようと密かに努力していました。ところがある日、翔太は……。

性質を問わず、人が社会で生きるということ

トランスジェンダー男性の主人公を中心としたこの物語は、LGBTQ+という社会課題に向けたメッセージ性をもつ作品ですが、特徴的な性質が感じられる物語となっています。

それは社会的に「普遍的な認識としてLGBTQ+という存在を理解しよう」というストレートなメッセージとは若干異なるもの。ある意味物語では「LGBTQ+という存在に対する偏見、違和感というものを払しょくしていく」ということはかなり困難、あるいは不可能であるということを前提としているようでもであります

主人公・翔太の父は、子供のカミングアウトにショックを受け、悩みながらもなんとかその事実を受け入れようとします。そしてなんとなく会うこともなく月日が過ぎ、とある事件で子供と対面することになるわけですが、その心配をしながらも実際に対面すると非常にこわばった表情を見せます。

そしてどこか違和感を隠し切れない様子を見せながら、展開の中で徐々に息子に気持ちを合わせていくわけです。

一方で翔太のパートナーである絵美は彼のことをすべて受け入れ、理解しているつもりでいたわけですが、彼に起こった事件で急に彼の家族と対面することになり、その時に見た家族の表情に大きなショックを受けることになります。

いつかは彼の家族と事実を前提に対面するだろう、と自分では覚悟を決めていたはずなのに、実際に彼の家族の顔を見て彼女の覚悟は完全に崩れ、自身がその時まで抱いていた自身の覚悟が大きくゆらいでいくわけです。

翔太は物語の軸となる存在であり、トランスジェンダーとして悩んでいながらも中立的な表情を見せる存在。そのため翔太の父親、恋人らの苦悩する表情、ショックを受ける表情が非常に鮮明に映し出され、LGBTQ+への理解という社会課題に対して、普遍的な認識とすることの難しさを事実として示しているようでもあります。

ただその事実に対し良し悪しという性質を示しているわけではなく、その本質に直面した際に人はまず戸惑いを見せることが当然であるとして提示し、その事実に対してどう向き合っていくべきだろうという問題を提起しているわけです。

LGBTQ+認識という課題に対して理想社会に向けた現実的な一歩を踏み出すために、どのようなことが想定され、どのように向き合っていくかを考えさせられる物語であるといえるでしょう。

また物語を形作るにあたり、俳優陣の組み合わせ、そしてそれぞれの表情に浮き彫りにされるコントラストはうまく練られたもの。俳優経験としては初挑戦である合田貴将のナチュラルな表情、そして巧みな感情表現を見せる升毅、鮎川桃果ら役者陣の組み合わせは、物語が示すメッセージ性をより強く印象的なものとしています。

映画『息子と呼ぶ日まで』は2024年11月1日(金)~14日(木)に東京・池袋シネマ・ロサにて行われるイベント『Divercity Cinema Week』にて上映

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