今回は「文章作成虎の巻2」。文章作成について、前回は「まず文章を書くには」という出だしの考え方について解説をおこないました。
さて、一通り文章の体裁ができたというところで、つぎに「これでOK!」という文章に仕上げる工程が必要となります。具体的には文章の見直し、修正ということになります。
ところがこれが意外に悩ましいもの。いったいどんな作業を、どれほどやれば「これでOK」となるのか、実はライターという職に就く自分ですら、本当の答えは分かっていないのではないかと思えるくらい、毎回悩んでいる工程でもあります。
そんな難しい工程でもありますが、まずはライターの経験上で考える「いい文章に仕上げるにはこういった状況が望ましい」という考えを、基本的なチェック、修正方法などと合わせて紹介します。
「嫌な編集さん」についてもらえると、文章力、チェック力は上達する!
基本的なことを説明する前に、一つ。
文章作成の経験の中で思うことですが、「重箱の隅をつつくように細かい指摘で嫌がられる編集さん」と出会えることが非常に大事で、実はこういった人物の存在が文章上達において非常に有効な存在であるといえるでしょう。
私がこれまでライター業をおこなった経歴上、この「嫌な編集さん」に2度ほどお世話になったことがあります。
その方の名誉のために言えば(笑)、決して「人間として嫌な」というわけではなく「指摘が細かすぎてうんざりする」という感じの印象だったかと思います。
とにかく最初にその指摘を受けたときには「俺だって小学校、中学校、高校と国語をずっと習ってきたんだから、文章ぐらい書けるわい!」と高(たか)をくくり、あまりにもチクチクと細かい指摘を続けてくるその編集さんには、最初はやりづらさすら感じていました。
ところが、そんな文章のやり取りをしているうちに、自分が意外と文章作りを分かっていなかったこと、自分の知らなかったことがたくさんあるということを改めて思い知らされ、それからは指摘を素直に受けるようになり、文章の見え方も当初からかなり変わったように思います。
ある意味こういった編集さんには、しがみついてでも長くお付き合いができる関係を築いていくことが重要であると思います。もちろんこのような人とお付き合いするには「チェックはこの人がやってくれるから…」なんていい加減な態度にならず、しっかりと指摘を一つ一つ整理して、そのスキルを身に着ける心構えが必要です。
仕事などで自分についてもらった編集さんの指摘が細かすぎる、とうんざりしている人、それはぜひその編集さんといい関係を築けるよう努力されることをおススメします。
基本的なチェック方法
近年は短い分量であれば文章チェックの大半をライターに丸投げというメディアも少なくないので、その意味でセルフチェックのスキルは必須といえます。個人ブログへの投稿というともう避けてはいけないところであります。
また上記に述べた優秀な編集さんがたとえついてもらえたとしても、チェックという行為がどのようにおこなわれ、自分はその中でどのようなチェックをおこなっておくべきかを知っておくことは必要です。
ここでは文章チェックの基本的的な手順などを紹介します。
文章チェックの基本
文章のチェックは基本的に「推敲」→「校正」・「校閲」の順におこないます。
ご存知の方も多いかと思いますが、それぞれ「推敲」とは「文章を何度も練り直すこと」、「校正」は「誤字や脱字といった文章、文法的な誤りを指摘する」作業、「校閲」は「文章の誤認を防ぐために内容の引用などに関する誤り、引用の可否(許可など必要かどうかの可否、差別問題に抵触しないかどうかの判断要否)などを確認する」作業のことを示します。
ボリュームのある文章についてはそれぞれ執筆者のほかに専任の担当者を立て別々に作業をおこない、最終的に文章を仕上げていきます。
短い文章のチェック方法
たとえば1,000~2,000字程度の文章でそれぞれ担当を立ててチェックをおこなうというケースはなかなかありません。当然、文章のボリュームに対してそれだけのコスト、時間をかけるべきかどうかという判断が入るからです。
もちろんこの分量でも「かけるべき」と判断して同じように「推敲」「校正」「校閲」をおこなうメディアもありますが、ニュースサイトなどで扱うような少ないボリュームの記事に関しては、執筆担当者がほぼ一人でチェックをおこない、入稿したのちに編集担当者が最終チェックをおこなって記事公開へと移る、というケースが多いかと思います。
この場合も結局執筆者が「推敲」→「校正」・「校閲」という順番にほぼ従った状態で文章を見直していくわけですが、まず大まかな部分、つまり「文章同士のつながり」「文章自体の要否」という点で一度文面を見直し、続いて一文毎の「校正」、文章の内容の裏取り「校閲」という過程を踏んで文章を仕上げていきます。
執筆者がほぼ全部文章チェックをおこなうときのコツ
このときのコツとしては、多くのチェック項目を一度に全部おこなってしまおうとせず、「推敲」「校正」「校閲」とそれぞれの過程を分けておこなうことです。
効率が悪いと思われるかもしれませんが、まとめてやろうとすると文章同士のつながりがうまくチェックできなかったり、まとめてやろうとしたことで見落としができたりと、かえって効率が下がる可能性も高く、最後に見直すと新たなエラーが織り込まれてしまう可能性も高くなります。
一つのアドバイスとしては「チェックの手間をケチるな」ということです。私もこれを怠ってエラい目にあうこともたまにありました…(涙)。
また、一人で執筆するときにはできるだけ時間を取り、各作業の間に時間を置くようにします。一人で執筆、チェックをするとどうしても執筆時の主観が強くなり、客観的な視点による不自然さを見落としてしまう可能性があります。
そのため時間が取れるようであればできるだけ一度チェックをおこなったあとに時間を取り、作成した文章に対しての思いを一度リフレッシュしてから再度チェックをおこなうようにしましょう。
意外に思われるかもしれませんが、時間を取って文章を見直すと「なんでこんな書き方をしたんだろう?」「ここの間違えを見落としていたわ!」とエラーに気づくことがわりとあります。
さらに時間をかけて文章の質を上げていく場合には、文章チェックの精度も上げていきましょう。全文小単位、そして文字単位とチェックする単位を細分化していくと、執筆時には気づかなかった誤字、脱字を見つけ出すことができます。
さらにもし可能であれば、一文字ずつ文章を消し込んで、合わせて文面を自分でつぶやいてチェックすると、違和感のある部分を正確に見つけ出すことも容易となるでしょう。
文章チェックの効率化にはツールも十分に活用しよう!
2章では基本的な文章のチェック方法を説明しましたが、しかし執筆しなければならない文章がたくさんある場合には、それ全部にこのチェックを自力で適用とするとかなり厳しいでしょう。
そんな場合には積極的に校正、校閲、比較などをおこなうツールを有効活用すると手間を節約できます。近年は簡単な文章チェックを無料でおこなってくれるWebサービスなどでも多く出ているので、作業を大幅に効率化することができるでしょう。
ただし注意として、ツールはあくまで完全ではなく作業の補助をおこなうレベルのものと考えるべきだということです。「このツールを一回通せば、校正作業は省ける」というわけにはいきません。
ツールの性格、性能をよく吟味した上で、自分でおこなうチェックポリシーを考え、時間短縮が図れる手順を確立することが必要となります。
文章の校正ツール
文章の校正、校閲の補助ツールとしてやはり最有力なのは、JustSystemが販売している「Just Right!」でしょう。これはPC用のソフトウェアで、誤字、脱字のチェックに加え漢字の標準性などまでかなり細かいチェックがおこなえます。ただし価格は結構値が張り、相当に文章作成作業がたくさんある場合でないとコスパがあわなくなります。
一方、近年はオンラインでの校正サービスがかなり充実してきています。その中でも高機能の有料サービスにはかなはないものの、PRUV(プルーフ)、ENNO(エンノ)、Tomarigiなどの無料オンライン校正サービスも、それぞれの特徴をうまくとらえて活用すれば文章チェックを十分に効率化することができるでしょう。
校閲チェックツール
近年はメディア側でWebコンテンツのコピペチェック(引用の仕方に問題がないかをチェックする)の実行を求められるケースも多くなっています。
CopyContentDetectorは文章をWebサービスの必要枠にコピペし、チェックボタンを押下するだけで、文章の引用率とともに文章自体の引用有無をパーセンテージで示してくれます。
このほかにもコピペをチェックしてくれるオンラインサービスは有料、無料のものそれぞれ近年かなり多く発表されていますので、オリジナルコンテンツ作成の場合には必需品といえるでしょう。
修正箇所の確認
何度も修正、入稿、戻しと文章チェックが続く場合、修正した箇所の履歴管理が必要な場合があります。
Microsoft社の文書ソフト「Word」のフォーマットでは修正履歴機能があり、これを文章作成後に設定、以後文章を修正すると自動的に修正した箇所を内容とともに
記録し続けてくれます。
またWebコンテンツでWordPressを使用されている場合は、コンテンツの修正保存をおこなうたびに文章がバージョン管理され、バージョン比較をおこなうと全バージョンの差分部分にチェックが表示され。修正箇所が分かるようになっています。
また単純なテキストフォーマットにおける二つの文章を比較するには、diffツールを活用するとよいでしょう。diffはWebでのオンラインサービスやオフラインでも使えるアプリケーションなど、多くのものが公開されていますので、自分で使いやすいものを探して選ぶとよいでしょう。