カメラ上達の醍醐味は「わけもわからないまま、シャッターを押したら、とりあえず何か写った!」というスタートから徐々に新しい知識、テクニックを身につけて、自分の作品がぐんぐんと良くなっていことを感じるところにあるといえます。
上達の秘訣は、自分の作品に対し「もっとこんな写真になれば…」という課題を抽出し、具体的な解決法を一つ一つ着実に身に着けていくことにあります。焦らずにしっかりと基礎を身に着けていきましょう。
さて前回の『一眼レフカメラ講座』に続き、カメラ撮影の初歩を考えてみたいと思います。前回は露出、シャッタースピードという観点からその基本を探ってみました。これは写真の「明るさ」「ブレなさ」という点に関わる設定の方法であります。
今回注目するポイントは「色味」という観点。先に習得した二つのポイントに加え、この「色味」という設定が攻略できれば、まずは「写す」という基本を押さえることができるといえるでしょう。
色味は、一眼レフカメラでは「色温度」というのパラメーターで設定を行います。本記事ではこの「色温度」が具体的にどのようなものなのか、現場でどのような設定を行えばいいのかを探ってみたいと思います。
※本記事における撮影例は、「Canon EOS Kiss X7」で撮影したものを使用しました。
設定でこんな風に変わる「色温度」
実はカメラの色味設定には結構細かな設定項目がたくさんあり、これらすべての設定を使いこなすにはかなり高度な知識やテクニックが必要となりますので、基本的な設定としては「色温度」の設定のみに留めるケースが多いといえます。
まず「色温度」ですが、これはもともと鉄などを加熱した際にその物体の色がオレンジ、黄色、白、そして青みがかった色へと変化し、温度と色という変化に関係があることが発見されたことより、色と温度の関係を数値で表したものを「色温度」と呼ぶこととなったといわれています。
実際にこのパラメーターは絶対温度を表すK(ケルビン)を単位として設定を行い、値の低い方から高い方に上げていくことに黄色っぽい色から青みがかった色へと変化していきます。
この「色温度」の設定は、デジカメでは通常ホワイトバランスという設定で値を決定します。これは撮影する状況における光の色合いに対して補正を行う機能。設定によっては「黄色っぽい色」を「青みがかった色」へ、あるいは逆の補正を行えるわけです。
基本的な調整方法
撮影環境(照明器器具)に合わせた設定
まずは基本的な手順として、肉眼で見て「白い部分」を白く映し出すための設定と考え設定を行うようにしましょう。敢えて「黄色っぽい色味」「青みがかった色味」と作品を作る上でどちらかに寄せるテクニックもありますが、まずは明確に「白を白に」というコントロールができなければ、色温度をうまくコントロールするのは難しいでしょう。
ホワイトバランスは光の具合によりさまざまな設定方法があります。具体的にはAWB、太陽光、日陰、雲天、白熱電球、蛍光灯、フラッシュなどといったプリセット項目が、各メーカーのカメラに搭載されるデジカメのホワイトバランスにおける初期設定項目として用意されています。
上の写真は、白色蛍光灯下においてカメラ側のホワイトバランス設定「くもり(約6000K)」にて撮影したもの。全体に黄色っぽい色となっています。
続いてこの写真は、同照明においてカメラ側のホワイトバランス設定「各熱電球(約3200K)」にて撮影したもの。今度は全体に青みがかかった色に補正されます。
このように撮影環境によって、黄色っぽい色にするにはカメラ設定の値を大きく、逆に青みがかった色にするには小さくすると考えればわかりやすいでしょう。
ここで「あれ?」と思われる方がおられることでしょう。上記のケルビン値は、先ほどの説明(値が少ない際に黄っぽさ、大きいときに青みが増す)と比べると矛盾しています。これはカメラ上の表記として「白を白く映し出す」方向に設定できることを意識しこのような表記とされています。
つまり、値が低い場合には「黄色っぽくなるため青みを加える」、逆に値が高くなると「青みが増すため黄色っぽさを加える」という感覚となるわけです。
設定に自信がない場合には、AWB(オートホワイトバランス)を設定します。これはカメラ側にて自動的に光の量を感知し必要な色温度の設定を行うというものです。上の写真は、AWBで撮影を行ったものです。
ただし撮影環境によっては、AWBだとうまく色温度が合わない場合もありますので、プリセット項目にて照明器具(白熱電球、白色蛍光灯など)に合った設定をした上で撮影を行います。上の写真は「白色蛍光灯(約4000K)」設定にて撮影を行ったもの。AWBのものに比べると若干黄色っぽさが少ない感じとなっています。
マニュアル操作による設定
ある程度厳密に色温度を設定する場合にはあらかじめ正確な色温度設定を行うために使用するグレーカードという備品を使用します。
この場合、カメラのホワイトバランス設定としては「マニュアル設定」という項目で行い、現場の照明状況にうまく色温度設定を合わせ、カメラの自動機能により正確に設定します。
私が赴いたイベント会場などでは、イベント開始前に宣伝担当さんにスケッチブックなどの真っ白な面を持ったものを手に持ってイベント現場に立ってもらい、カメラマンは撮影場所からホワイトバランス調整を行っていました。
感覚的に設定を行う
プリセットの設定がイマイチだったり、自身の感覚に合わせた色温度設定を行いたいと思ったりする場合には、色温度の数値を手動で設定する方法もあります。
これは白熱電球や蛍光灯といった大まかな設定項目ではなく、ケルビン値の色温度単位量で色温度を設定するというもの。つまり手動である程度色温度量を変えながら撮影画面をその場で確認し、自分の感覚で「問題ないだろう」という値を設定するわけです。(ただし、カメラの機種によってはこの設定が行えないものもあります)
正確性という意味では若干ズレる可能性もあるかもしれませんが、短時間である程度自分が納得する色温度設定が行えるので、わりに私も現場では多用していた手順であります。
注意すべきは、デジカメの撮影確認画面は小さいので、実際に後ほどパソコンに取り込みある程度の大きさで画像を確認したときに「あれ?こんな色味で撮っていたっけ?」と違和感を覚える可能性もあります。
違和感を少なくするには経験がものをいうところもありますので、いろんな写真を撮って「どのような色味設定が適しているか」「どんな色味設定を自分が欲しているのか」を感覚的に理解していくとよいでしょう。
仕上げに対する注意
レタッチによる補正を前提とするときの注意
ホワイトバランスの補正は、撮影後でも多少であればフォトショップなどのレタッチソフトにより後で補正が可能です。
ただ自分のイメージとあまりにもかけ離れた色味で撮影してしまうと、レタッチソフトによる補正を行った際に大きな違和感が出てしまう可能性があります。そのためできるだけ「ほぼ補正の必要がない画像を撮る」ことを意識しましょう。
また撮影フォーマットをいきなりJPEGフォーマットにした場合、補正の仕方によっては画質を劣化させる恐れもあります。極力失敗を避けたい場合には、RAWフォーマットで撮影を行うことをおススメします。
RAWとはデジカメ側で個別に搭載されているデータ形式で、一般にJPEGなどのデータに比べ色調などの表現がずば抜けて精密に設定できるようになっています。基本的にカメラが画像をJPEGとする場合は、このRAWフォーマットよりデータを変換しJPEGデータとしています。
そのため、JPEGフォーマットによる補正に比べれば、画質の劣化はずっと少なくなる可能性があるというわけです。
カメラの楽しみ、実はここからがスタート
さて、『初心者のための一眼レフカメラ講座』と銘打ち、取材現場の経験を踏まえて撮影の基本的な手順を説明してきましたが、いかがでしょう?
実際に撮影してみて「思ったより自分のイメージしている写真にならない」と思われる方もいるかもしれません。
実はその考え、正解です。というのも私がここまで説明してきた内容は、あくまでカメラで「無難な画を撮る、基本的な手順」を説明した内容に過ぎません。
例えばこれを「作品作り」といった高度な目的に持っていこうとすると、さらに被写体に合わせた撮影方法、構図、イメージの作り方などといったさらに高度な知識、経験が必要となります。
でもがっかりする必要はありません。新たな発見や学習により基本的な手順を一つ一つ着実に身に着け、だんだんとカメラが上達するさまは、自分からしても快感に見えてくるところであり、「カメラを楽しむ」醍醐味であります。
魅力的な写真を狙えるようになるためには、多くの写真に感銘を受け「こんな風に撮影したいんだけど、どう撮影すれば?」という思いを重ねていくことが重要であるといえるでしょう。