難病患者は孤独になりがち
皆さんは「難病」という言葉を知っていますか?知っていても具体的にどんな病気を指すのか、定義は何なのか知らない人がほとんどではないでしょうか。
不治の病、余命が短いなどのイメージを抱く人もおられるかもしれませんが、実はそのようなひとくくりに出来るものではありません。2023年4月現在、日本で難病とされているものは300以上あり、様々な特性のものがあるからです。
一般的に新聞やテレビでよく見聞きする難病には「パーキンソン病」や「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」「潰瘍性大腸炎」などがありますね。
難病患者である私自身も、お恥ずかしい話ですが難病の定義をあまり詳しく知りませんでした。
私は進行性の筋疾患ですが対症療法的な投薬なども全く無い難病のため、この病気の為の通院はほとんどしていなかったのが、無知の原因です。つまり、そこまでまだ解明されていない為、何も為すすべがなく放置するしかない難病だからです。
どうせ通院しても無駄だからと専門医の診察を受けない→同病の人や患者会に関する情報を得られない→孤独に陥る→治験の情報なども入らない…という状態にある人は多いのではないかと思っています。
事実、私の同病の友人たちにも、そのような人がとても多かったです。希少難病ですから周囲に同じような人がおらず、こんな状態なのは自分だけなんだと思い込んでいた人もいます。
私もそうでしたがインターネットが一般家庭に普及し始めてから、自分なりに色々と調べて、同病の仲間たちとつながり情報交換するようになりました。同じ病気の当事者同士で患者会を作っておられるところも多いです。
私も病気を治すことはできないけれど、現在は、症状の進行(筋力低下)を遅らせる為の簡易なリハビリテーションを行うことで対処しています。
難病と診断されたかた、そのご家族などにとって、少しでもこの情報がお役に立てば幸いです。
「難病」の定義
「難病」というと、一般的に「治りにくい病気」「治し方が分からない病気」のような意味で使われますが、実は医学的に明確な線引きは無いのです。そのため、国では、治療研究などを国が主導で進める必要があると判断した、希少な難治性の疾病を定めて対策を行っています。
まず、1972年に策定された「難病対策要綱」では、難病とは以下のように定義されました。
- 原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病。
- 経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病。
その後、2015年1月1日施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)では、次の要件にあてはまるものが難病と定められました。
- 発症の機構が明らかではない
原因が不明または病態が未解明な疾病が該当するものとする。 - 治療方法が確立していない
以下のいずれかの場合に該当するものを対象とする。
(1)治療方法が全くない。
(2)対症療法や症状の進行を遅らせる治療方法はあるが、根治のための治療方法はない。
(3)一部の患者で寛解状態を得られることはあるが、継続的な治療が必要。 - 希少な疾病であって
- 長期の療養を必要とする
疾病に起因する症状が長期にわたって継続する場合であり、基本的には発症してから治癒することなく生涯にわたり症状が持続もしくは潜在する場合を該当するものとする。
難病に認定する時には、患者数等による限定は行われません。他の施策体系が樹立されていない疾病を幅広く対象とし、調査研究・患者支援を推進する目的があります。(例えば悪性腫瘍は、がん対策基本法において体系的な施策の対象となっているため、難病には含められていないわけです)
また、治療法が確立すれば「難病」の定義から外れます。そのため、厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会というところで随時、内容の見直しや新たな疾病の追加検討がなされています。
昨今は治療法の研究も目覚ましいものがありますので、いつか、この難病と呼ばれる疾病が減ってくるといいのになぁと願わずにはいられません。
この難病法の中では、「難病」と同時に「指定難病」という言葉が出てきます。
これは「医療費助成の対象」とするためのもので、また異なる定義がありますので、次回の記事で詳しくご説明していきたいと思います。
参考となるサイトのご紹介
「難病情報センター」
厚生労働省補助事業として公益財団法人難病医学研究財団が運営。
国の難病対策の最新情報、難病患者が利用できる制度紹介などを提供されています。
厚生労働省HPより「難病対策」ページ
ある疾病が難病に認定されるとどんなメリットがあるのか
従来、難病の新規治療法の開発研究は、「マーケットが小さいこと(治療薬の対象となる患者さんが少なく、開発のメリットが少ない)」や「病因が不明であるために治療薬の開発が難しいこと」などの理由から、製薬会社はあまり積極的に手掛けてきませんでした。
しかし、国が総合的な難病対策を実施することによって、難病に対する調査・研究が進み、効果的な治療を行うための医薬品や医療機器、再生医療などの研究開発が進むことにつながっていくことが期待されています。
難病による症状とは
多くの難病に共通する主な症状として「全身的な体調の崩れやすさ」があると言われますが、症状の有無や程度は、疾病や治療の状況、個人により差があります。症状が進んでいない時は日常生活もそれほど問題なく過ごすことができる疾病もあります。
一方、日によって体調が変動したり、常に何かの症状が出て苦しんだり、寝たきりになったり、歩けない等の障害が残る場合もあります。
根治につながるような治療方法が確立されていませんので、症状を抑制したり、進行を緩やかにするための治療が行われることがあります。症状が安定している時期であっても、症状悪化の予防のため、服薬や自己注射等の日々の自己管理を必要とする人もいます。
私の場合はほぼ何も対処する術がない疾病ですが、筋肉が侵される病気ですから、私でも今後、心臓の動きが悪くなれば循環器系での治療が必要になりますし、呼吸機能が落ちてくれば人工呼吸器などの措置を取る必要が出てくる可能性があります。
難病患者の多くは、将来への不安を抱えながら生活しています。
「難病」という名前のイメージから誤解され、就労したくても偏見や無理解で離職を余儀なくされたりすることもあるようです。対症療法や治療が必要な人の場合は、医療費負担など経済的な面で困ったりする場合もあります。医療費のこと、就労のことを今後は掘り下げていきます。
次回は、理解するのが少し複雑な、「難病」と「指定難病」の違い、指定難病の人が申請できる「特定医療費(指定難病)受給者証」をご紹介します。