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水素社会ははたして一般的な未来となるのか?

SDGs
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1. はじめに
みなさんは「水素社会」という言葉を聞いたことがありますでしょうか? 水素は燃やしても温室効果ガス(二酸化炭素など)を発生させないため、クリーンエネルギーとして近年注目が集まっています。
この水素社会について、とある新聞記事を見つけました。今回はその記事をもとに
・水素は身近になるのか
・水素に関心を持つ必要があるのか
こういったことを考えていきたいと思います。
筆者は環境問題に強い関心を寄せており、水素のライバルとなる電気(電池)についてもある程度の知識があるため、それぞれのメリット・デメリットを照らし合わせながら具体的な比較をしていきます。

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2. 記事の概要と私が考えたこと
今回取り上げるのは日経産業新聞で2020年9月18日に掲載された「水素社会へ加速する欧州 道筋描けず遅れる日本」という記事です。概要は
・ヨーロッパでは政府と企業が共に水素社会の実現に向けて歩みを進めている
・日本では家庭用燃料電池や水素ステーションの普及は進んでいるものの、政府は水素社会への具体的な道筋を描けておらず、企業も「水素を導入するにはお金がかかる」、「せっかく石油で儲けてこれたのに水素が普及したら石油が売れなくなる」などの理由で消極的
・政府は補助金を出すなどして普及を後押しし、企業は水素社会のトップであり続けるためにどんどん変化していくべきだ
こういった内容です。
私はこの記事を読んで
・水素が直接目に見える形で一般家庭の暮らしに入ってくる可能性は低い
・会社員としては今後も水素社会の動向を見守っていく必要がある
という、一見すると矛盾しているようなことを考えました。なぜこのような考えに至ったのか、解説していきます。

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3. 水素が暮らしに直接は入ってこないと考える理由
今後、各家庭で水素を使って家電を動かすようになったり、水素で走る自動車が街中をたくさん走り回ったりするようになるのでしょうか? 私はそうはならないと考えています。理由は4つあります。

3-1. 厳重な取り扱いが必要
水素は可燃性の気体であるため、取り扱いに注意が必要です。中学校の理科の授業で水素にマッチ棒を近づける実験を行ったことを覚えていますか? ビンに貯めた水素に火を近づけた瞬間ボッと燃え上がったと思います。
このような危険な気体を安全に貯めておくには相当頑丈なタンクでなければなりません。実際、水素を貯める高圧タンクは普通のガスタンクの2~4倍以上の圧力がかかっており、穴が開いたりしたら大変危険です。高圧に耐えるには分厚くて重いタンクにならざるを得ず、
・タンクの価格が上がる
・重いので置き場所に制限がかかる
といったデメリットが生じてしまいます。これは普及の足かせになってしまいますね。
ここでこう考える方がおられると思います。
「デメリットがあるのは分かったけれど、それを上回るメリットがあれば家庭にも普及するんじゃない?」
確かにその通りです。ただ、調べてみると家庭では水素のメリットがあまり生かせそうにないのです。

3-2. エネルギーを大量に必要とするものがない
水素ならではのメリットとして、「高出力に強い」ということが挙げられます。天然ガスなどを燃やすのに比べると取り出せるエネルギーは少なめですが、それでも電気と比べると大きなエネルギーを得ることができます。電池を積んでいる電気自動車よりも水素を燃料として走る燃料電池自動車のほうが長く走れるのはそのためです。
ところが、家庭では大きなエネルギーを使う機会があまりありません。工場にあるような大型機械を持っている家はほとんどないでしょう。水素を使わなければ生活が成り立たないのなら出番がありますが、基本的には電池で足りてしまうわけです。

3-3. 長期間貯めておく必要がない
水素のもう一つのメリットは「長く貯めておける」ことです。電池は時間が経つと勝手に放電してしまい使えなくなってしまうのに対し、水素は気体として貯めておく形のため、タンクに穴さえ開かなければ何十年貯めても減ってしまうことはありません。
ですが、この特性も家庭には不要だと思われます。なぜなら、家庭では常にエネルギーを使っているので長く貯めておく必要がないからです。冷蔵庫、照明、テレビ、エアコンなどの家電がたくさんあり、家にいながら一日中まったく電気を使わない日はまずないでしょう。

3-4. 災害時に補給しにくい
日本が災害大国であることは皆さんも実感していると思います。地震、台風、土砂崩れなどがよく発生する日本のインフラを考える上で「防災」の視点は欠かせません。
この点でも水素は電気と比べると不利です。例えば大地震が発生してインフラがダメージを受けたとき、復旧にかかる時間(想定)は
・電気→1~2週間
・ガス→数か月
と大きな差があります。
また自動車に水素を補給する水素ステーションも、タンクの中身が空になってしまったらそれ以上水素を供給することができません。ガソリンスタンドと同じように水素を積んだタンクローリーで都度運んでこなければいけないため、途中で道が寸断されていたらなかなかたどり着けないことになります。電線さえつながればどこでも充電できる電気自動車のほうが災害時に使える可能性が高いのです。

4. それでも水素について関心をもつべきなのはなぜ?
ここまで水素が目に見える形で私たちの生活に入ってくる可能性は低いという考えの理由を解説してきました。
しかし、私はそれでも水素社会についての情報は今後もしっかり把握していかなければいけないと考えています。なぜなら、「日本の電力網に水素が組み込まれる可能性があり、SDGsに関連があるから」です。
SDGsとは「世界をより良くするために世界中の国のトップが国連で議論を重ねて生み出した目標」のことです。2015年に国連で採択され、日本も参加して取り組んでいくことになっています。この目標の一つに「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」というものがあります。現在主流の二酸化炭素を排出する発電方法から、太陽光や風力といった二酸化炭素を出さない発電方法へ変えていこうという目標です。
このクリーンエネルギーを推進していくためには、「いかに安定した電力を生み出せるか」が課題となっています。太陽光や風力は天気任せのところがあり、発電量が安定しないからです。これを解決する方法の一つとして水素の利用が検討されています。たくさん発電しているときにその電力で水素を作り、電力不足になったら水素を燃やして発電、電気を供給するという仕組みで、水素をいわばダムや貯水池のように活用しようというものです。私たちが日常的に使っている電力網に水素が大きく関係してくる可能性があるのですね。
これは企業にとっても他人ごとではありません。事業を行うに当たってお金を借りる際に「SDGsに積極的に取り組んでいるか」が評価の対象となってきているからです。実際にiphoneで有名なAppleや検索界の王様Googleも電力を100%クリーンエネルギーに変えることを表明しており、
「SDGsに関心がない=企業が存続できない」
と言っても過言ではない世界になりつつあるのです。
SDGsに取り組むことで会社が評価される世の中になることを考えると、会社員としてはSDGsの目標に関わってくる水素についてもしっかり情報を集めていかなければならないのです。

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5. まとめ ~水素は環境問題解決手段の一つ~
今回は水素社会についてどう考えていけば良いのかについてお話ししました。結論としては、
・水素がインフラとなるには
・ 厳重な取り扱いが必要
・エネルギーを大量に必要とするものがない
・長期間貯めておく必要がない
・災害時に補給しにくい
こういったデメリットがあり、目に見える形で一般家庭に普及する可能性は低いと考える
・企業の評価の対象であるSDGsに水素が関わってくるため、水素についての情報収集は今後も必要
となります。会社で安定して長く働いていくためにも、水素についてアンテナを高く張って見守っていきましょう。

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