2023年も半ばを過ぎ、世間をずっと騒がし続けてきたコロナ禍も少しずつ落ち着いて、以前のように音楽・ライブ活動も積極的に楽しめるようになってきました。
100年に1度と言われる病災に、生活環境や人生観など大きな影響を受けた私達ですが、ここ数年リリースされる楽曲達もコロナ禍前と後とではだいぶ様相が変わったように思います。
今回は2023年上半期にSNS等で大きく注目を浴びたおすすめの名曲3選を、音楽好きのZ世代である筆者がランキング形式で皆様に紹介します。
名曲ながらまだ世間に知れ渡っていないものもありますので、ぜひ参考にして音楽を楽しんでみてくださいね!
【1位】死ぬな!/こっちのけんと
出典元:YouTubeこっちのけんと-菅生健人
2022年12月に配信リリースされた楽曲です。
わずか2ヶ月でSpotifyの国内バイラルチャート12位にチャートインしました。
2023年9月現在、YouTubeにて970万回近く再生されています。
軽快なリズムにラップ調の韻を踏んだこの曲は、Z世代の若者の心を掴み、現在もストリーミング累計再生回数をじわじわと伸ばし続けています。
その人気は一つの媒体だけにとどまらず、こっちのけんとさんが在籍するアカペラグループ・ALLOWLのメンバーと共に歌ったアカペラバージョンも好評です。
また「茶壷ダンス」と呼ばれるショート動画や、二次創作でも英語バージョンがつくられ、SNSを中心に拡散されて大いに人気を博しているんですよ!
キャッチーなメロディーもさることながら、MVの落語風で明るく面白そうなイメージとは裏腹に、作者であるこっちのけんとさんは“重大なメッセージ”をリスナーに発信しています。
死ぬな!が発信するメッセージとは?
こっちのけんとさんのYouTubeチャンネルの概要欄に以下のような記述があります。
僕は“良くない事”だと考えているのですが、『死にたい』と口にする人が多いと感じます。
…中略…
それでも死にたいと考えてしまう人へ強引に『死ぬな!』と伝えたくて、この曲を作りました。
簡単な言葉にしますが、僕も過去に『死にたい』と考えていました。
…中略…
『この先、生きていたら良い事が待ってる』なんて確証のない言葉で生きる理由を作るよりも、強引に現世に引っ張る方が助けられるのではないかと思い、『死ぬな!』というタイトルにしました。
この曲を聴いてどうこう変わる事は無いかも知れませんが、少しでも自分の中の『死にたい自分』と対話してくだされば幸いです。
まずは、『死にたい』と言うよりも、『願い事を3つ』考えてほしいです。引用元:こっちのけんと公式YouTubeチャンネル
またウェブメディアTHE MAGAZINEのインタビュー記事の中で、かつて鬱状態になっていたことを明かしています。
苦しい状態の中で、歌を披露しなければいけない状況になってしまったものの無理矢理その場で歌ってみた時に、僕は歌を歌った方が良いんだと気付いたそう。
YouTubeチャンネルの解説動画の中で、たくさんのリスナーから寄せられたコメントに暖かい返答をし涙ぐむ姿に、心動かされた方も多いのではないでしょうか?
MVにもあるように、いくら注いでも溜まらない水槽の水…、そんな状態の苦しみを理解している・経験している作者だからこそ、深みのある名曲を制作できたのだと思います。
こっちのけんとは菅田将暉の弟!
ご存じの方も多いとは思いますが、こっちのけんとさんは俳優・歌手として有名な菅田将暉さんの弟です。
著明でマルチな才能を持っている菅田将暉さんの弟として複雑な環境・思いを抱いていたこともインタビューや解説動画で述べています。
しかし今は、アーティストとして偉大な兄を誇りに感じているとのこと。
人間として様々な想い・苦しみ・喜び・葛藤などを知っている作者だからこそ、人間としての器が誰よりも大きく、その人間性が花開くような楽曲を作成し、多くの人々に支持されているのだと思います。
特に『死ぬな!』は、混沌とするこの令和の時代を生きる若者に“刺さる”名曲だと感じます。
魅力あふれる言葉あそび!
本曲の良い所は、歌詞に隠された言葉あそびにも表れています。
解説動画にもありますが「なんて承知のくせに、死に急いで」の部分は、「にし(西)にいそいで」と聞こえるように歌っています。
この『西』とは、”go west”~西に行く~という英語の隠語で『死ぬ』を意味するものだそうです。
また「皆様ようこそお越しくださいました!」や「ガッテン承知の助」「お便り無しで。」「踊り明かす」など言葉のチョイスが落語風で面白いですよね。
他にも「ガッテン承知の助」と「なんて承知のくせに」が韻を踏んでいてキャッチーで印象に残ります。
解説動画でも話していますが、まだまだ隠し要素があるとのことで、考察する面白さもあって良いですよね。
重いテーマを軽快なリズムで歌い上げる魅力!
MVもセンスが高く和風っぽい印象を与えるものの、曲調はラップ調で伴奏も令和風でカッコよくオシャレです。
特にサビはノリが良く中毒性があると、コメントが多数寄せられています。
またサビで、力強さを感じるのもいいですよね!
解説動画でも触れられていましたが、「死ぬってなんだろ、楽になれそう?」のあとにくる「馬鹿を言うなよ!」はラスサビ前なので楽曲的にも歌詞的にも非常に重要な箇所でしたが、大きな思いをぶつけて言葉にし、歌としてインパクトのあるように表現しており、名曲となった所以でもあると言えます。
こっちのけんとさんの音楽的な大きな才能を実感します。
アカペラバージョンもおすすめ!
先にも触れましたが、こっちのけんとさんはアカペラグループALLOWLのメンバーとしても活躍しています。
メンバーと共に歌った『死ぬな!』も、とても良いです。
これはこれで違う曲調になっていますが、アカペラだからこその美しさがプラスされていて、違う意味でのオシャレさも感じます。
特に、アカペラで聴くベース部分(ウォーキングベース)は非常に良いですよ!
二次創作でリスナーが作った英語バージョンを本人がカバーし、歌っている動画もおすすめです。
「Got damn!Show me you stay」が、空耳で「ガッテン承知の助」と聞こえるのが凄いと思います。
茶壺ダンスのショート動画もTikTok等で流行っています。
『死ぬな!』は今後も伸びていく楽曲だと思いますので、まだ視聴したことのない方はぜひ聴いてみてくださいね!
【2位】ゴールデンタイム/紫 今
出典元:YouTube紫 今- Mulasaki Ima
SNS世代のシンガーソングライター、紫 今(Mulasaki Ima)さんの楽曲。
2022年年末にTikTokに投稿された本曲はバスり、2023年3月にフルバージョンがリリースされました。
[作詞・作曲・編曲・歌・絵:すべて私]と、若干21歳ながらもてあますほどの才能を見せつける、紫 今さん。
本曲の魅力についても語っていきたいと思います。
幅が広く、圧倒的な歌唱力!
魅力は大きく分けて3つあると思います。一つ目はもともとハスキーでダウナーな、紫 今さんの『声』を楽器と捉え様々な効果的な加工を施し、しゃくりやフォールなどの歌唱技術を用いて完璧な音楽として仕上げていること。
過去に【歌ってみた】の動画投稿をされていただけあって、高い歌唱力を見せつけていた紫 今さん。本曲では様々な歌唱技術を取り入れ、歌として幅広い魅力あふれる曲として仕上げています。
特にDメロでは楽器の音をあまり使わず、ボーカルだけで勝負しています。
メロディーが単調なので歌のスキルが無いと上手く聴かせることができないのですが、見事リスナーを引き込むことに成功しています。
何度聞いても、ボーカルの上手さが際立っていますよね!
音を上手く活用し、音楽性を引き上げている!
二つ目は様々な音(逆再生音、Faxの音、ラジオの声等)を効果的に用いたり、逆になんの音もない瞬間を作ったりして、曲にインパクトを与えていること。
サビの最初の「ゴールデンタイム」の箇所で加工された声が重なり、愉快さを与えることで狂気も感じさせ、楽曲としてのセンスの高さを感じます。
サビの「なってくれよ」の後に一瞬音が止まり、ドキっとしますよね!
音の静と動を上手く使い分けています。
2番はラップ調に変わるのですが、逆再生音を入れることで別の世界(ノリ)にスムーズに移行させています。
サウンドを効果的に組み合わせ、このような楽曲を紡ぎだせるのはクリエイターとして天才と言っても過言ではないと思います。
中毒性のあるメロディー!
三つ目はキャッチーで耳に残る、サビのメロディーの良さにあると思います。
現在はまだ再生回数は少ないですが、これからまだまだ伸びていく楽曲だと感じます。
「曲が頭から離れない」「中毒性がすごい」「入りから惹き込まれる」と高評価をつけるリスナーがたくさんいるんですよ!
特にZ世代に後押しされ、SNSを通じてどんどん拡散されています。
今年、大注目のネクストブレイクアーティストです!
【3位】AWOKE/DOLLCHESTRA
出典元:YouTube(Love Live! hasu)蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ公式チャンネル
2023年3月にリリースされた楽曲です。
DOLLCHESTRA(ドルケストラ)は、『ラブライブシリーズ・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』に登場するスクールアイドル(ミニユニット)。
村野さやか(CV:野中ここな)さんと、夕霧綴理(CV:佐々木琴子)さんの2人でユニットを組んでいます。
CV:の野中さんはさくら学院、佐々木さんは乃木坂46出身です。
筆者はあまりアイドルの曲は聴かないのですが、この曲の持つ素晴らしさを伝えたいと思い、ランクインさせていただきました。
音楽的な観点から本曲を見ていただけたら嬉しく思います。
驚く、曲構成!
この曲はただのアイドル曲ではなく、非常に音楽性の高い楽曲であります。
まず驚いたのが、一般的ではない曲構成。
また曲の入り方が独特のリズムで、いきなり心が掴まれます。
コードもエモく、前奏の伴奏も素晴らしいです。
予想を裏切る形でインパクトがあり、作曲者・編曲者の高い音楽的センスを感じます。
まさに、神曲です!
音楽的魅力の詰まった曲!
まず初めに突然、印象的なメロディーである裏サビから始まり、この曲が”他の平凡な曲とは全く違う!”ということを匂わせます。
そして前奏が入りますが、ヴァイオリンが使用されておりエレガントさを感じさせ、非常に良いと思います。
また、ギターの刻みがカッコイイ!
その後、掴みが一般的では無かったのでAメロで気持ちを落ち着かせるような旋律となります。
しかし最初はテンションを下げるはずのBメロが、この曲は非常に短いのでそのままテンションが上がり、すぐにサビに入るので驚かされます。
サビでは「引き戻して」の後にクリシェ進行が入り、次の繰り返しでリズムなど少し味変させていて、リスナーに面白さを感じさせます。
そしてサビ後の裏サビは、曲の初めに入った裏サビの後が伴奏(前奏)だったので流れ的に伴奏(間奏)が来るのかと思いましたが、入らず驚きました。
しかも2番はAメロではなく、新しいCメロに入る構成でいい意味で期待を裏切ってきました。
Dメロはラップ調になり、令和らしいカッコよさを感じさせます。
その後カッコいいドラムソロが入り、またサビに突入します。
そのまま裏サビは入らず、Eメロとなり三拍子(ワルツ調)でメルヘンチックになります。
ラスサビも少し今までと違うメロディーがあり、裏サビでフィナーレを迎えます。
3:21秒という短い1曲の間に何回も驚かされ、音楽の面白さを味あわせてくれました。
アイドル・DOLLCHESTRAの魅力も!
引用元:ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ
「新鮮な曲」「可愛くてカッコイイ」「ライブ映えヤバそう」とファンの方々も期待を寄せています。
もともと輝いていたDOLLCHESTRAの魅力を最大値まで引き上げさせた楽曲だと思います。
コメントを見ると外国からの応援コメントも多く、今までにない形のアイドルとしてDOLLCHESTRAさんは羽ばたくのかもしれません。
これからの活動が楽しみですね!
まとめ
今回は、Z世代がおすすめする名曲3選を紹介しました。
同じJpopでも少しジャンルの違う3曲ですが、SNSを通じて音楽の世界を楽しむ令和の若者たちの視点を感じ取っていただけたら幸いです。
今後も音楽の奥深さ・愉しさを発信していけたら…と思います!