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私の人生を支えたメロディ その2:あいみょん「生きていたんだよな」

生きづらさを抱えて
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今回紹介するのは、現在国内で絶大な人気を誇るシンガーソングライター・あいみょんの「生きていたんだよな」です。

近年ではNHKの連続テレビ小説「らんまん」に彼女の曲「愛の花」が主題歌として使用されるなど、今や押しも押されもせぬ大スターで、心に響く印象的な曲を、抜群の歌唱力で歌い上げ、多くのファンを獲得しているあいみょん。

一方、彼女のメジャーデビュー作「生きていたんだよな」は、メジャーというフィールドに移りながらも、なにか商業的な空気に染まり切らない尖ったカラーを放っており、私はこの曲との出会いで胸の内をギュッと強くつかまれたような衝撃を受けたのです。

今回はこの曲のちょっと変わった登場エピソードとともに、私がこの楽曲から受けた衝撃の根源などを紹介していきます。

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曲からの衝撃を後ほど知った、曲の奇妙な登場

一見破天荒、しかしどこか人々の胸に突き刺さる深い心理が隠されているその作風で大きな注目を集め、2015年にメジャーデビューを果たしたあいみょん。「生きていたんだよな」は、その年の11月30日にリリースされました。

当初楽曲はテレビ東京で放送されたドラマ「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」の主題歌に起用されました。

漫画家マキヒロチの原作作品を映像化したこのドラマが、私は式でよく見ていたのですが、実はこのドラマの序章部分がミソ。

「人生に悩む若者が心機一転すべく吉祥寺住まいに憧れ、吉祥寺にある不動産屋『重田不動産』に迷い込む。そして若者の希望をさんざん聞いた挙げ句に不動産屋の姉妹は『じゃあ、吉祥寺やめようか!?』と一喝、その言葉に『へ?』と目が点になる若者…」

そしてこの歌のオープニングが流れてくるわけですが、当初「生きて 生きて 生きて 生きて 生きて…」とキャッチーのあるフレーズ。私には逆にキャッチーすぎて「ちょっと大げさ気味なフレーズだな。でもドラマの内容にはなんとなく合っているからこそ響いてくるのかな…」とファーストインプレッションはあまりよくなかったものの、何度も聴いているうちにいつしかメロディーが耳に馴染んでいました。

ところがある日、実はテレビで流れているバージョンがドラマに向けて編集された特別バージョンで、実は正式リリースされたものは全く異なり衝撃的な内容であったことを思い知らされたのでした。それもそのはず、この曲のテーマとして織り込まれているのは「とある女子高生の自殺」。どちらかというとドラマの内容に合わず、かつテレビなどのメディアでは取り上げにくいものだったのです。

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楽曲から見えてくる一つの核心


ドラマで流れるバージョンはイントロからすぐサビに移るというアレンジがされていますが、MVで聴かれる通りにオリジナルバージョンでは最初にあいみょんの語りでとある少女の自殺をニュースで聴いたこと、そしてその話題に群がる人たちの姿を想像した光景、そして自殺した当事者を思い浮かべる様子が歌われています。

もっともショックだったのは、サビとサビの間に歌い込まれる、強い思いのような表現

ああ「今ある命を精一杯生きなさい」なんて綺麗ごとだな
精一杯勇気を振り絞って彼女は空を飛んだ
鳥になって雲をつかんで
風になって遥遠くへ
希望を抱いて飛んだ

冒頭の語りの部分があるかどうかで、この部分の読み取り方は大きく変わってきます。ドラマ向けアレンジバージョンでは「綺麗ごと」という言葉、すなわち世間一般で「当然のこと」といわれること、常識などと押さえつけられていることに対して戦い、強く生きていく姿が見えてきます

ところがオリジナルバージョンの「語り」が入ると、この光景はガラッと違う風景に見えてきます。「空を飛んだ」という表現はまさしく身投げしたことを示しており、客観的に見ると「勇気」は「あきらめ」、「希望」は「絶望」に見える

しかし身を投げた当事者の目線では、「身を投げる」ことが前向きな選択であり、その選択こそ「希望」、その一歩を踏み出すきっかけは「勇気」だったとも見えます。前者は歌を歌う第一者の視点、そして後者は第三者の視点で自殺をした人を寄り添った格好で想像、描き出していたわけです。


オリジナルバージョンのテーマは、テレビドラマの主題歌にするにはとても難しいものであったため、苦肉の策的にこのようなアレンジにしていたのか、あるいはもともとこのような見え方を想定して作られたものであるかは定かではありません。

しかしドラマと合わせて見たアレンジバージョン、そしてオリジナルバージョンを比較すると、それぞれに異なる視点を感じながらも共通するポイント、テレビなどで見える表面的な情報の裏にある核心を、彼女独自の視点による見え方で立体的に表現したようでもあり、斬新なクリエイティブ性が感じられたものでありました。

「私がこの曲に魅かれた理由」とある人とのエピソードより


そのひとひねりもふたひねりもある楽曲自体の登場も私には衝撃的でしたが、私にとってショッキングだった要因は、私自身が当時出くわした大きなタイミングにぶつかったことにもありました。

当時あるきっかけで一人の女性と、一度だけメールのやり取りをおこなう機会がありました。今思えば本当にそのときだけ、ふっとすれ違っただけのコンタクトでしたが、その後彼女は自殺をしてしまったことを知りました。

理由も状況もわからないままでしたが、自分が関係していた人が自殺をしてしまう、そんな出来事が起きたことは人生で初めてだったこともあり、たった一度のコンタクトであってもやはり自分としては非常にショックなことでした。


過去には東京で会社員として働いていた自分でしたが、当時は会社に入って数年、自分自身の思いと会社とのズレが日に日に拡大していったことに、大いに悩まされていたことがありました。

そんな自分だからこそ、彼女の死という事実を知った瞬間には頭をガツンとハンマーで殴られるような衝撃を受けながらも、さまざまに自身の気持ちに響くものを感じていました。

そんな複雑な思いでいたタイミングに出会った「生きていたんだよな」はショッキングでありながらも、どこか自分に寄り添ってくれるような世界を紡ぎ出してくれたようにも思えました。

あの出会いから数年、未だ周囲との温度差で思い悩むこともありますが、今でもこの曲はそんな自分を客観的に映しながらも否定せず、どこか寄り添って癒やしてくれるような空気感を覚えているのであります。

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