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映画『そして、優子Ⅱ』 「普通って何?」という問いから、生きることを考えさせられるドラマ|広島国際映画祭2024レポート その2

生きづらさを抱えて
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11月22日より3日間に亘り、広島にてイベント『広島国際映画祭2024』が開催されました。

この映画祭は2009年に開催された「ダマー映画祭inヒロシマ」を前進として誕生したもので、広島という地で行われることをコンセプトとして「ポジティブな力を持つ作品を、世界から集めた映画祭。」というポリシーを掲げ毎年開催されており、今年は15周年という節目の時を迎えました。

今回はコラムにて、この映画祭で特別招待された作品を、イベントに招待されたゲストによるトークショーのレポートとともに紹介していきたいと思います。

第2回は、佐藤竜憲監督による映画『そして、優子Ⅱ』です。

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映画『そして、優子Ⅱ』とは

概要


ヤクザの父親と二人で暮らす女子高生の優子が、父親の職業が原因で揺らぐ日常と向き合い、普通の幸せとは何かを問うヒューマンドラマ。

映像作家としてドラマ、CMなど幅広いジャンルで活躍する佐藤竜憲監督が作品を手掛けました。主人公・優子を演じるのは、広島出身の女優・瀬戸みちる。他にも柳憂怜、ドロンズ石本ら広島出身の俳優が出演を果たしています。

あらすじ


とある小さな田舎町の父子家庭で育った女子高生の優子は、何か決断をすることが大の苦手な少女。

父親は男手ひとつで、一般家庭と同じように優子のことを大事に育ててきた一方で、ヤクザを生業にしているという別の顔がありました。父親の取り巻きの組員たちは娘を溺愛する一方、どこか憎めないヤクザばかり。 しかしその稼業は、時代と需要が遠のいてしまったことでシノギ(収入)が大幅に減少、組は存続の危機に陥ります。

そんな立場にありながらもそれなりに楽しく毎日を過ごしていた優子でしたが、 日々積み重なる些細な出来事は、やがて少しずつ彼女の平穏な生活を崩しはじめるのでした。

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広島国際映画祭2024 佐藤竜憲監督、出演者 トークショー

佐藤竜憲監督

作品は11月24日に上映され、公開後には作品を手掛けた佐藤竜憲監督、作品に出演した瀬戸みちる、豊田崇史、野辺富三、冲正人、虎太郎、江藤あや、新宅康弘、森本のぶ、ドロンズ石本らとともに登壇し、映画製作にまつわる経緯などを語りました。

佐藤監督はこの映画のテーマとして「普通って何だろう?」を最大の焦点としたことをコメント。

その中でも映画の撮影中にも、普通ではない人々にたくさん出会い、さまざまに感じたことがあり「白黒をはっきり付けなくても良い。その意味では『グレーゾーンの美学』というべきものを伝えたかったのかもしれません」と、深い思いをもって物語を紡ぎ出したことを振り返ります。

一方、撮影はスタッフ、キャストが同じ旅館に泊まり和気あいあいとした雰囲気で進行、この日訪れたキャストは「合宿のようで楽しかった」と印象に残る現場であったことを回想していました。

「普通である」こととポジティブに生きることの関係


作品のタイトルから印象的な作品でありますが、そのオープニングのタイトルの出し方に「えっ?」と驚かされるところがあります。

このタイトルはそのままエンディングにつながる、ある意味伏線のようなものであり、物語の筋と合わせて終焉を迎えた時に「なるほど」と感じさせる、印象深い作りとなっている作品であります。

主人公の少女・優子は胸にさまざまな思いをいだきながらも、その悩みが多すぎて決断ができない、「答えが出せない」状況に陥っている少女。近年の若者に対して「自分の意見を持たない」「自主性がない」「夢を見ていない」と批判的な声が上がることもありますが、優子はこの若者像にかなり当てはまっているようにも見え、その意味で彼女の姿は近年の若者のが抱いているさまざまな不安感や、彼らの真の姿を感じさせます

主演の瀬戸みちる

この視点で見ると、彼女の「決断できない」という性質は、その複雑な彼女自身の周りの状況におけるバランス保持のために、決断自体が難しくなっていることから起因しているとも見られ、彼女が自分自身に対し「普通である」ことを望むのは、そのさまざまなしがらみから逃げたい、という願望を抱いているから、と考えられることでしょう。

物語は展開する毎に積み上がっていくさまざまな出来事の中で、彼女が傷つき悩みを増やしていきながら、最後に何らかの結論を示していきます

ヤクザの娘という設定はある意味極論的な条件ではありながら、現実に彼女と同じような悩みを持つ若者がたくさんいるであろうことも想像できるところであり、「普通である」ということ、人が生きていくということの両方を、実際にどう結びつけて考えていくべきかを考えさせられる物語であるといえます。

ラストはどちらかというと優子に対してはハッピーエンドではないものの「自分の人生をポジティブに生きていくには」といった問題を深く考えさせられる結末となっています。

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