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映画『99%、いつも曇り』 「生きづらさに悩む人たち」の生きる意義をさまざまな視点から問う

生きづらさを抱えて
(C)35 Films Parks
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発達障害グレーゾーンでありながらも明るく元気に生きる一人の女性を中心に、彼女を取り巻く人たちの姿より改めて社会における人の在り方を問うドラマ『99%、いつも曇り』が全国順次公開されています。

作品を手がけた声優・女優の瑚海みどりが、15年ほど前にとある人から「自分もだけどあんたもアスペルガーだと思うよ」と言われたことをきっかけに生まれたという本作。

「発達障害」というテーマを取り上げた作品は、当該者自身の性質にスポットを当てたものが多くありますが、この物語では「生き方に悩む人が、周囲の人たちとともに日常社会でどう生きていくか」という新たな視点を提供しています。またいわゆる「発達障害グレーゾーン」という微妙な位置にある特質を取り上げている点にも注目です。

本作は2023年、第36回東京国際映画祭の「Nippon Cinema Now」部門で上映、同年の第17回田辺・弁慶映画祭では観客賞、弁慶グランプリ、俳優賞、わいず倶楽部賞と多くの受賞を果たしました。さらに2024年9月に行われるあいち国際女性映画祭でも国内招待作品での上映予定となっており、各所で高い評価を得ています。

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映画『99%、いつも曇り』とは

作品概要


アスペルガー傾向という特質を抱えた一人の女性を中心とした視点より、社会における「発達障害」というテーマにまつわる人々のさまざまな思いなどを綴ったドラマ。

自らが監督を務めた短編映画『橋の下で』『ヴィスコンティに会いたくて』を発表し注目されている俳優・声優の瑚海みどりが、本作で長編初監督・脚本・主演とマルチな活躍を果たし作品を作り上げました。共演には映画『バベル』にも出演した二階堂智らが名を連ねています。

公開年:2023年(日本映画)
監督・脚本:瑚海みどり
出演:瑚海みどり、二階堂智、永楠あゆ美、Ami Ide、KOTA、曽我部洋士、亀田祥子、月田啓太、吉岡礼恩、秋葉有嬉、根口昌明、野井一十、浅地直樹、井上薫、塾一久、ありす、美加里、矢島美藍、遠藤百華、露木心菜、露木容子、伊藤慶徳、田中栄吾、石毛笑子、吉岡優花、程塚さくら、松本亜鐘ほか
配給:35 Films Parks

あらすじ

(C)35 Films Parks

自分がアスペルガー傾向であることを悩みながらも正義感が強く、いつも明るく元気な45歳の女性・楠木一葉。

母親の一周忌で家族、親戚一同と対面した際に、彼女は叔父から「子どもを作らないの?」と尋ねられ言いわけをして否定しますが、夫の大地が子どもを欲しがっていることも知っており、内心大きく動揺します。

15年前に流産した経験もあり、自身の境遇から子作りに前向きになれない一葉。養子を迎えるよう勧められたきっかけから彼女は行動を起こしますが、二人の想いは徐々にズレを生じていくのでした。

性質を問わず、人が社会で生きるということ

(C)35 Films Parks

本作は「発達障害」を扱った物語である上に「自身の子ども」というテーマを絡めて物語を構成しているところに、非常に広い視点を感じさせるものとなっています。

自身の持つ発達障害グレーゾーンであるという特徴に悩む主人公・一葉を中心にその夫婦生活、家族関係、周囲の人間とのふれあい、そして子どもを持つという願い。

ときに人は一葉の振る舞いに戸惑いながら、彼女が「身近にいてほしい人」「なくてはならない人」であることを示されていきます。

その様は、彼女がその特質如何に関わらず、社会の中では一人の人間であることを改めて示しているようでもあります。

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物語で最も魅力的なポイントは、やはり主人公・一葉役を演じた瑚海みどりの存在感でしょう。

周囲にはいつも明るく元気に振る舞う一葉。一方で内にはさまざまな問題に悩みながらも強く生きていこうとする芯の強さもあるように感じられます。

冒頭からパンチのあるルックスで登場する彼女でありますが、物語で見えてくる一葉の姿は「発達障害」という言葉のイメージだけではない、いわゆるそのレッテルのようなものをすべて取り払った人の真の姿が見えてきます。

その振る舞いや立ち姿にはネガティブな面よりむしろポジティブな印象が強く、人としての魅力にあふれています。瑚海が見せたその演技からは、役者自身の人間性との乖離をあまり感じさせない、自然な振る舞いが見えてきます。

全体的にセリフの多い中、言葉一つ一つの重みも感じられるこのドラマですが、特にもともと声優としての活動が多い瑚海だけに、声の出し方から生き生きとした意思が感じられ、非常に言葉の意味や情熱をおぼえるものとなっています。

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また本作では、一葉と夫・大地とのやり取りも非常に重要なポイントを示しているようでもあります。

どこか個性の強い一葉と、そんな彼女に手を焼きながらも彼女との毎日を過ごす大地。物語が進んでいく上で、大地にとって一葉は「そばにいなくてはならない人」であることを物語の最後に強く表しています。

このことは「発達障害」という課題に対する考え方の原点のようなもの、つまりどのような特質を持っている人も、社会に存在する意義を持っているものである、ということを改めて示されているようにも感じられます。

物語からは『99%、いつも曇り』というタイトルから見えてくる製作者側からの思いのようなものも感じられます。

「『99%、いつも曇り』でも、『1%の晴れ』を待つことで、人は充実した人生を送ることができる」、そんなポジティブなメッセージも見えてくることでしょう。

映画『99%、いつも曇り』は2024年8月28日(水)~31日(土)にテアトル新宿、2024年9月25日(水)にテアトル梅田、2024年9月27日(火)よりTHEATER ENYA、2024年9月下旬よりシネマスコーレ、以降全国にて順次上映

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