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映画『星より静かに』ADHDという社会課題に当事者が向き合い「生きる」ためのヒントを模索した物語

生きづらさを抱えて
(C)ステューディオスリー
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ADHD(注意欠如・多動症)と診断された一人のクリエイターが作り上げた、社会におけるADHDの位置づけ、実態を探る映画『星より静かに』が公開されます。

近年「生きづらさ」をテーマとした映画作品の中でも、徐々に多く取り上げられつつある、ADHDという性質。この状況は、現代社会においてそれだけこの性質が社会的にさまざまな場所で見られる、あるいはその可能性が考えられていることを示唆し、大きな関心を呼んでいることを表しているともいえるでしょう。

本作では特にドキュメンタリーパートが設けられており、現代社会におけるADHDの認識、受け入れられ方など、このテーマに対して興味深いアプローチをおこなっています。

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映画『星より静かに』とは

作品概要

(C)ステューディオスリー

ADHDをテーマにインタビューなどを交えたドキュメンタリーと、ドラマ映像を交えて描いた作品。

映像ディレクター、監督などとして活躍の経験がある君塚匠監督が作品を手がけました。ドキュメンタリーパートには君塚監督が自ら出演し、街ゆく人々や日頃から関わりのある人たち、精神科医、薬剤師、講師を務める専門学校、就労移行支援事業所などにインタビューを実施、社会におけるADHDの実態に迫っていきます。一方でドラマパートには内浦純一、蜂丸明日香、三嶋健太、渡辺真起子らが好演を見せています。

製作年:2024年(日本映画)
監督・脚本:君塚匠
出演:内浦純一、蜂丸明日香、三嶋健太、渡辺真起子ほか
配給:太秦

あらすじ

(C)ステューディオスリー

ADHD—— “注意欠如・多動症”という意味を持ち、年齢あるいは発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きがないといった特性がある。

現在、日本にはこの症状がある人が300万人いるとされており、正式な診断を受けていない人も多く、実際の人数はさらに多い可能性がある。

55歳でADHDと診断された君塚匠監督は、「一人でも多くの人にこの症状を知ってもらい、生きやすい社会になってほしい」という思いから、映画を制作することを決意した。

新たな視点で考えるADHDへの向き合い方

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(C)ステューディオスリー

君塚匠監督が手がけたこの作品は、監督自身も作品に出演しADHDという立場の人たちが社会においてどのように受け止められているのか、どう生きていくべきなのか、さまざまな視点において多方面へのインタビューをおこない、その実態と社会における認識などに迫っています。

インタビューの内容として興味深いのは、ADHDという診断に対する当人やその周辺の人による認識を、自身もADHDと診断されている君塚監督が中心となってたずねている点にあります。これが「ADHDと診断されていない人による」インタビューであれば、その内容は全く異なる印象のものとなる可能性もあるかもしれません。当人が話を聞くという点に関して強い説得力を生んでいるといえます。

君塚監督が投げかける問いの多くには自身の思いも強く感じられ、「ADHDである」人が抱く不安のような要素が見えてきます。これに対して返答側の返答は、その不安を払拭する、あるいは払拭するためのヒントのようなポイントも見られ、非常にポジティブな方向性を感じさせる内容としてまとめられています。

(C)ステューディオスリー

一方でADHDの人とその周辺を取り巻く人々を描いたドラマパートでは、この状況に置かれた人々がどのように日常に折り合いをつけて過ごしていくべきか、そのヒントのような光景が描かれています。

物語ではADHDの人と周辺の人との衝突をときに見せながらも、このケースをどう受け止めるとよいのか、どのような話をしていくとよいのか、といった具体的なケースも多く織り込まれる一方で、非常に温かな雰囲気をもった光景を描いており、見る側を前向きな気持ちに誘導します。またこのパートからは、合わせてADHDの当事者であろうがなかろうが、必ず人は誰かから必要とされ生きているものだという、温かなメッセージを受け取ることでしょう。

劇中ではこの二つのパートと、ときにドキュメンタリーパートにドラマパートの出演者を織り交ぜたシーンもあり、どこかドラマが架空の話ではない、現実味をもった内容であることをさらに強く感じさせてきます。

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(C)ステューディオスリー

物語の冒頭と最後には、内浦純一が演じたドラマに登場するADHDの主人公・佐藤はじめが、その妻・朱美と糸電話で会話するシーンがありますが、これはまさしく現代におけるADHDである人、そうでない人との関係をイメージしたものと見えてきます。

そしてラストシーンは、主人公が笑顔で言葉を発するシーンがあります。この言葉はこれら全編の示す方向性、生きづらさを乗り越える道は必ずあるというメッセージにも見え、全編から感じるポジティブな印象を強く示していることが感じられます。

ADHDという壁に悩む当事者自身が発するメッセージという点において、本作は新たな視点を提示し見落としがちなポイントを示した上で、社会課題に対する新たな考えを提起するものであるといえるでしょう。


映画『星より静かに』は2025年6月21日(土)より全国順次上映

 

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