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映画『CROSSING 心の交差点』異文化交流の象徴トルコを舞台に描かれる「生きづらさ」の影と交わることで生まれる「理解」

生きづらさを抱えて
(C)2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB
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トルコ・イスタンブールを舞台に、異なる境遇や思いを持つ人々の出会いと重なりからさまざまな「生きづらさ」への問いを描いた映画『CROSSING 心の交差点』が公開されます。

トルコの隣国・ジョージアに自身のルーツを持つスウェーデン出身のレバン・アキン監督が、トランスジェンダーの少女と彼女を支えた祖父との実話に着想を得て物語を構築。

綿密なリサーチを重ねて描かれるイスタンブールのトランスコミュニティーは映像としても味わい深く、強い興味を惹かれるものとなっています。

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映画『CROSSING 心の交差点』とは

作品概要

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東西の文化が溶けあうトルコ・イスタンブールの街を舞台に、言葉も世代も文化的背景も異なる3人の人生が人捜しの旅を通して交差する姿を描いた物語。

前作「ダンサー そして私たちは踊った」で国際的に高く評価されたレバン・アキン監督が作品を手がけました。

キャストには実際にトランスジェンダーであるデニズ・ドゥマンリを起用するなど、トルコやジョージアといった国のトランスジェンダーの認識を交えた、LGBTQ+の課題に関する深い言及が物語に織り込まれています。

製作年:2024年(スウェーデン・デンマーク・フランス・トルコ・ジョージア合作映画)
原題:Crossing
監督・脚本:レバン・アキン
出演:ムジア・アラブリ、ルーカス・カンカバ、デニズ・ドゥマンリほか
配給:ミモザフィルムズ

あらすじ

(C)2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB

ジョージアで暮らす元教師のリア。

彼女は行方不明になった姪テクラを探すため、テクラを知るという青年アチとともにトルコ・イスタンブールへ向かうことになります。

トランスジェンダーであるというテクラ。しかし言葉での意思疎通すら困難であるトルコで、行方をくらませた彼女の捜索は難航、やがてリアはトランスジェンダーの権利のために闘っているというNGO団体の一員、エヴリムと出会い、助けを借ります。

テクラを捜す旅の中、全く異なる境遇を持つ三人の心の距離は、少しずつ近づいていくのでした。

世界の「交差点」に立つ人々の静かな声

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本作は、ジェンダーや社会的立場の違いによって生じる「生きづらさ」を、決して説明的にならずに描き出す作品です。

主人公リアは教師として生きてきた一方で、その境遇から生きづらさを抱える一人です。彼女は伝統や慣習の中で生きてきた世代でありながら時代の変化を無視することもできず、その狭間で揺れ続けている人であるとみられます。

誰かの正解に従うことも、すべてを否定することもできない。その中途半端さこそが、現代を生きる多くの人にとっての現実なのかもしれません。

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トランスジェンダーであり、社会的弱者を支援するNGOに関わるエヴリムは、正義感の強さゆえに社会から距離を置かれ、時に冷たい視線を向けられる存在です。その姿は、声を上げること自体が負担になりうる現実を浮かび上がらせます。

一方で青年アチは、母の失踪という個人的な喪失を抱えながら、未来に希望を見出せずに生きています。彼の無気力さは怠惰ではなく、選択肢の少なさから生まれたものとして描かれます。

そしてそれぞれの一方的な側面からは見えないそれぞれの本質に触れていくことが、互いの理解を生んでいくことを物語で示しています。本作が誠実なのは、これらの生きづらさを絶対的な「克服すべき課題」として描かない点です。

(C)2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB

出会いによってすべてが解決するわけではなく、理解は常に不完全なまま。それでも人は、誰かと交差することで、自分自身を少しだけ見つめ直すことができる。その可能性を本作は静かに提示します。

明確な答えを示さないエンディングは、生きづらさと共に生きる私たち自身に、その問いを委ねているようでもあります。

異文化交流の象徴的な地として知られる一方、LGBTQ+などの新時代に向けた論点に対しての理解が、まだ発展途上であるトルコという国。この国を舞台に、本作は「自分とは異なる境遇を持つ人同士の出会い」の姿から描かれます。

お互いの「理解」の姿より、誰かを代表させるのではなく、個々の人生に寄り添う視点が観る者に静かな共感を促したこの物語。声にならない感情にそっと光を当てる作品として、多くの人の心に留まるはずです。

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