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映画『CRANK-クランク- 』 思い悩みながら人生を歩む人の姿を自転車を通して描いた短編|尾道映画祭2024レポート その2

ライフワーク
高良健吾監督『CRANK-クランク-』 『アクターズ・ショート・フィルム3』
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1月12日より3日間に亘り、広島・尾道にてイベント『尾道映画祭2024』が開催されました。

尾道は、古くは小津安二郎の『東京物語』など、数々の名作を生んだロケ地であり、日本を代表する故・大林宣彦監督の生まれ故郷でもあり、大林監督が生前「尾道三部作」「新尾道三部作」をはじめとした地に由来のある作品を輩出したことから「映画の街」としても知られています。

『尾道映画祭』は、そんな尾道で2017年より開催。2020年はコロナ禍の発生に伴い一時中断しましたが、2021に制限を設けながら開催し、第七回となる今回は実に5年ぶりとなる通常開催を迎えました。

今回はコラムにて、この映画祭で特別招待された作品を、イベントに招待されたゲストによるトークショーのレポートとともに紹介していきたいと思います。

第2回は、現在主に俳優として活躍する高良健吾が監督として初めて挑戦した短編映画『CRANK-クランク-』です。

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映画『CRANK-クランク-』とは

概要

高良健吾監督『CRANK-クランク-』 『アクターズ・ショート・フィルム3』

予算・撮影日数など同条件で5人の俳優たちが25分以内のショートフィルムを制作し、世界から6,000本超の作品が集まる米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』(SSFF & ASIA)のグランプリ:ジョージ・ルーカス アワードを目指す企画『アクターズ・ショート・フィルム』の第三弾に収録された一遍。

俳優の高良健吾が監督として作品を手がけます。キャストにはメインキャストである中島歩、染谷将太のほかに井浦新、柄本佑、河井青葉や、映画監督の廣木隆一らが名を連ねています。

あらすじ

高良健吾監督『CRANK-クランク-』 『アクターズ・ショート・フィルム3』

メッセンジャーとしてオフィスへ荷物を届け、忙しく東京中を走り回る毎日を送る丸。

ある日彼は、仕事帰りに立ち寄った町中華の店で、メッセンジャー仲間のヒデと偶然出くわします。

他愛もない話の中で、突然「田舎へ行こうと思っている」と語り出したヒデの言葉。彼の言葉に丸は自分の未来に不安を感じ、それでも夜の道を駆けていくのでした……。

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尾道映画祭2024 高良健吾監督、廣木隆一監督 トークショー


作品は1月14日に広島・シネマ尾道で上映され、上映後には作品を手がけた高良健吾監督が、本作に出演した映画監督の廣木隆一監督とともに登壇し、映画製作にまつわる経緯などを語りました。

もともと廣木監督が主催した俳優のワークショップに高良監督が参加したことでその付き合いが始まったという二人。高良監督が初主演を果たした映画『M(エム)』では当時、廣木監督の事務所に寝泊まりしながら現場に通っていたことを回想、「怒られっぱなしで憂鬱な毎日でした」と振り返ります。
「久々に悩む姿を現場で見られて嬉しかった」廣木監督は監督として悪戦苦闘する高良監督の表情より、そんな悩みに明け暮れた毎日を思い出したとばかりに語ります。


本作のテーマについて高良監督は、もともと自分の趣味が自転車であったことが発端であり、「自転車のクランク(ペダルに込められた動力が直に伝わるギヤ部分)は、回っていないと自転車が倒れてしまいます。タイトルやテーマに関してもそこからの発想でした」と語ります。

初監督という経験を経て「次回作は?」とたずねられると、高良監督は「いやそれはもう…」と否定。「今回は撮影期間2日という短い撮影で『本当にこれでいいんだろうか』という迷いの中での撮影だったし。また自転車は都内では撮影のための制約が多くて映画づくりという面では難しいところもありました。その意味ではいい経験にはなりましたが」と大変だった当時を振り返りながら、俳優としての廣木監督とならんで「こうして(監督として)立つのは今回最後です」とコメント、場内の笑いを誘います。


一方、この日は場内の観客からも質問を受け、俳優、映画監督としての仕事で「普段より心がけていることは?」とたずねられ、高良監督は「『雑にならないこと』。それはわりと若いころから心がけていたと思います」と回答、廣木監督は「平常心」とシンプルに答えます。

また仕事を得るチャンスが訪れた際に考えること、という質問に「昔は来た仕事に対し『これは僕じゃないほうが』とか言って(受ける仕事を)分けていたんですが、30歳を過ぎたころからはあまりそういうことを思わなくなり、『この役を自分がやるとしたらどうだろう?』みたいに、前向きに考えてみたりしています」とコメント。合わせて「自分にこだわりが無くなっていることは少し寂しい気もするけど、それもいいかなとも思うんです」と、自身の仕事に対する考え方の変化を振り返っていました。

「作り手自身」が見える物語

高良健吾監督『CRANK-クランク-』 『アクターズ・ショート・フィルム3』

本作は作り手自身の姿、性質が強く感じられるものといえるでしょう。

自転車というアイテムは高良監督自身の趣味でもありますが、自転車を通して監督が普段どのようなことを思い生きているかを垣間見ている気持ちにもなります。

テーマとしては、人が「自身の歩んでいる道が、自分にとって本当に正しいのか」と悩む姿を描いたものでありますが、多くの人が共感できるテーマでもあり、それを出演者の他愛もない会話、普段の何気ない生活の画の中でうまく表現しています。

主演の中島歩をはじめ実力派の俳優が揃っているだけに演技とならず、かつ自然にもなり過ぎない絶妙なバランス感の演技が、程よく見る側に登場人物たちの心理を感じさせ、物語のテーマを際立たせています。


高良監督は、初めての監督経験、合わせて少ない撮影期間をはじめさまざまな制約のある中での撮影で大いに戸惑い、悩んだと語っていますが、そんな気持ちすら映画のテーマにも反映されている感じにもとれる、生き生きとした作品であるといえるでしょう。

ちなみに本作では一部、端役として高良監督も出演を果たしていますが、他の役者陣に比べ大仰にも見えるその芝居は思わず笑ってしまいますが、逆にその雑っぽさが作品全体の完成度の高さと程よいコントラストを形作っているようにも見え、うまくまとめ上げられた感を醸し出しています。

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