NASやルーターは、たいてい電源を入れっぱなしです。そこに古いPCを1台足して、ファイルサーバーやWebサーバーにしている方もいると思います。
ふと気になります。これ、火事にならないのか。
検索すると、けっこう強い言葉が並びます。「24時間稼働の時限発火装置」「絶対にやってはいけない」。読んでいるうちに、不安になってきます。
私は、デスクトップとノートPCを合わせて6年、NASを8年、ルーターを10年、24時間つけっぱなしにしてきました。合計すると24年分です。 火事にはなっていません。
ただ、「だから安全です」と書くつもりはありません。 私が無事だったことは、何の証明にもならないからです。
この記事では、広まっている話の出どころを確かめて、公的なデータを見て、そのうえで自分の24年分を一例として出します。
広まっている話の出どころ
「ノートPCをサーバーにしたら火事になった」という話が、あちこちで引用されています。CPUの周りにたまったホコリがショートして火花が出た、という内容です。
調べてみると、引用元はほぼ1つの記事に集約されます。そして、その記事のURLは、いま無関係なサイトになっています。 記事自体は消えて、引用だけが残っている状態です。
さらに、この話には技術的な疑問も出されています。CPUの周りでショートするというのは考えにくいという指摘、そして火災のあとにPC内部のどこが火元だったかを特定するのは、そもそも難しいという指摘です。
つまり、この話題は一次情報が確かめられないまま、伝聞が広がっている状態です。
嘘だと言いたいわけではありません。ただ、根拠として扱うには弱いということです。
公的なデータは、別のことを言っている
では、確かな数字はどこにあるか。NITE(製品評価技術基盤機構)が、製品事故の情報を集めて公表しています。
リチウムイオン電池の事故は、実際に多い
NITEによると、2020年から2024年までの5年間に、リチウムイオン電池を搭載した製品の事故が1860件報告されています。そしてその約85%が火災事故に発展しています。
気温が上がると増える傾向があり、6月から8月がピークだそうです。
これは、はっきりした事実です。ノートPCのバッテリーは、まさにこれです。
ただし、原因の内訳が重要
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
NITEが以前まとめた調査では、ノートPC・モバイルバッテリー・スマートフォンの電池事故274件について、原因の内訳が出ています。
- 製品の不具合によるものが78%
- 274件のうち34%が、リコール対象の製品
つまり、事故の主な原因は「使い方」ではなく「製品そのもの」だということです。
検索して出てくる記事は、ホコリ、熱のこもり、置き場所といった使い方の話が中心です。それも大事ですが、公的なデータが指しているのは別の方向です。
いちばん効く対策は、掃除ではなく「リコール情報の確認」ということになります。

私の24年分
そのうえで、自分の実例を出します。条件を全部書きます。 条件が違えば結果も違うので。
使った機器と期間
- 自作デスクトップ(Core i7-3770T) …… 約2年
- ThinkPad 240Z …… 約2年
- ThinkPad T500 …… 約2年
- Synology DS218j(NAS) …… 約8年
- YAMAHA RTX1210(ルーター) …… 約10年
合計で24年分。いずれも24時間つけっぱなしです。

温度
ノートPCの底面の表面温度で、動作時に50度くらいでした。
ここは、よく混同されるところです。CPUのコア温度ではありません。 内部の温度はもっと高くなりますが、ケースの外側は50度前後で落ち着いていました。
木材が長時間の加熱で炭化しはじめる温度は、これよりずっと高い領域です。50度は、そこには届いていません。
やっていた対策
正直に書くと、これといった対策はしていませんでした。
置き場所は机の上。密閉はしていません。ホコリは、多かったかもしれません。
異臭がしたことも、異音がしたことも、触れないほど熱くなったこともありません。
結果的に、リスクを避けていた
あとから並べてみると、意図せず安全側に寄っていた部分がありました。

低発熱のCPUを選んでいた
デスクトップに使った Core i7-3770T。型番末尾の T は低消費電力版で、通常版より発熱がかなり少ない品種です。
ただ、これを選んだ理由は電気代でした。 24時間動かすので、少しでも安くしたかった。発熱が少なくなったのは、結果論です。
それでも、結果として発熱の小さい構成になっていたことは事実です。
置き場所が良かった
危険とされる条件は、だいたい床置き・密閉・ホコリの3つです。
私は机の上で、密閉していませんでした。 3つのうち2つを、意図せず避けていたことになります。
ホコリだけは、避けられていません。 ここは運が良かった可能性があります。
バッテリーが新品だった
ここが、いちばん大きいと思います。
ThinkPad は2台とも、バッテリーを付けたまま運用していました。上位記事がいちばん警戒している状態です。
ただし、240Z は2000年前後に、T500 は2008年に、どちらもほぼ新品の状態で使い始めています。
つまり、劣化した電池を積んだまま動かしていたわけではありません。
NITEのデータが示すとおり、電池の事故は製品の不具合が主因です。新しくて不具合のない個体だったから無事だった、という可能性は十分にあります。
だから、言えないこと
ここは、はっきり書いておきます。
私の24年分は、安全の証明ではありません
1人の経験は、1つの事例にすぎません。
機器の個体差、部屋の環境、ホコリの量、電源まわりの状態。条件が違えば、結果も違います。
いちばん多いケースを、私は試していません
これが重要です。
世の中でいちばん多いのは、使わなくなった古いノートPCを、サーバーとして再利用する形だと思います。
私がやったのは、その逆でした。 新しい機体を、新しいうちに使っただけです。
劣化したバッテリー、固まった放熱グリス、詰まったファン。いちばん警戒すべき条件を、私は経験していません。
ですから、「古いノートPCをサーバーにしても大丈夫」とは言えません。 そこは試していないので。
バッテリーを付けたままは、勧めません
私は付けたままでした。それでも、勧めはしません。
電池の事故は実際に起きていて、しかも火災に発展する割合が高いとNITEが示しています。
外して運用できるなら、外したほうが安心です。
いま自分が始めるなら
これから24時間稼働の機器を置くなら、この順番で確認すると思います。
1. リコール情報を確認する
公的データが示す、いちばん確実な対策です。
電池事故の3分の1が、リコール対象品によるものでした。掃除より先に、ここを確認してください。
とくに、古い機体を再利用する場合は必ず。当時のリコールを知らないまま、押し入れに入っていた可能性があります。
2. バッテリーを外せるか確認する
常時給電で使うなら、電池は基本的に不要です。
最近の機種は内蔵型で外せないものが多いので、その場合は膨張していないかを時々見るくらいになります。本体が浮いたり、トラックパッドが押し上げられていたら、そこで使用をやめてください。
3. 発熱の小さいものを選ぶ
私の場合は電気代が理由でしたが、結果として発熱の小さい構成になっていました。
NASやルーターのような24時間稼働を前提に作られた機器は、そもそも発熱が小さく設計されています。用途が合うなら、そちらのほうが素直です。
4. 置き場所を選ぶ
床に直置きしない。 ホコリが集まりやすく、放熱もしにくい。
密閉した棚に入れない。 熱がこもります。
可燃物の上に置かない。 紙、布、カーペット。
5. 電源まわりを見る
意外と見落とすところです。
タコ足配線にしない。 コンセントにホコリをためない。 電源アダプタが熱すぎないか、時々触ってみる。
ノートPCの電源アダプタは消耗品で、故障したまま使い続けると危ないと言われています。
6. 掃除する
あえて最後に置きました。
大事な習慣ですが、これだけやっていれば大丈夫、というものではありません。 公的データが示す主因は、掃除では防げない部分にあります。
まとめ
- 広まっている「ノートPCサーバー発火」の話は、引用元の記事がすでに消えていて、技術的な疑問も出されている
- NITEのデータでは、リチウムイオン電池搭載製品の事故は5年で1860件、約85%が火災に発展
- ただし原因の78%は製品の不具合、34%はリコール対象品。使い方より製品そのものが主因
- いちばん効く対策は、掃除ではなくリコール情報の確認
- 私は合計24年分を24時間稼働させて、無事故。ノートPC底面の温度は50度前後
- 結果的に、低発熱のCPU・机の上・非密閉・新品バッテリーという条件が揃っていた
- ただし、これは安全の証明ではない。 1つの事例にすぎない
- 古い機体の再利用は、私は試していない。 いちばん警戒すべき条件を経験していない
- バッテリーは付けたままだったが、外せるなら外したほうが安心
不安になって検索した方が、過度に怖がることも、油断することもなく判断できれば、この記事の役目は果たせたと思います。
気になったら、まずお使いの機器がリコール対象でないかを確認してみてください。

