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「生きづらさ」を世に問う印象的な短編映画たち|広島国際映画祭2024レポート その4

生きづらさを抱えて
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11月22日より3日間に亘り、広島にてイベント『広島国際映画祭2024』が開催されました。

この映画祭は2009年に開催された「ダマー映画祭inヒロシマ」を前進として誕生したもので、広島という地で行われることをコンセプトとして「ポジティブな力を持つ作品を、世界から集めた映画祭。」というポリシーを掲げ毎年開催されており、今年は15周年という節目の時を迎えました。

今回はコラムにて、この映画祭で特別招待された作品を、イベントに招待されたゲストによるトークショーのレポートとともに紹介していきたいと思います。

最終回となる第4回は、映画祭で上映された数々の短編映画の中で、特に人が「生きづらさ」に向き合う姿を印象的に描いた作品をセレクトし紹介します。

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『さよならを決めた日』(国際短編映画コンペティション:観客賞)


2023年製作(日本映画)/30分
監督:北畑龍一
出演:戸塚純貴、渡辺真起子、遊屋慎太郎、高尾悠希ほか

同性愛者の息子を理解できず、かつシングルマザーでの母が入院、まもなく死を迎えるという話を耳にしに心揺らぐ息子の視点より、親子という関係の真に迫ります。

多くの「生きづらさ」を抱えた親子。そしてお互いに理解できず反発しながらも「親子」という絆からつながりを見出し、関係を見出していくさまには、「生きづらさ」の認識の仕方を改めて想起させられるものであります。役者陣の心の機微をうまく描き出した表情からは見る側が強く引き込まれ、偏見や固定観念などといった認識と親子という関係を深く考えさせられるでしょう。

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『ゴースト・ララバイ』(国際短編映画コンペティション:審査員特別賞)


2023年製作(韓国映画)/29分59秒
監督:イ・ジヒョン
出演:ビョン・ジュンヒ、ハ・スンヨン、キム・ユンスルほか

幼い頃に生き別れた子供への思いを胸に、自身の罪を償うように生きる一人の女性。そしてある日彼女が遭遇した思わぬ事件で見た彼女の奇跡のような情景とは…

この物語の主人公である一人の女性も、複雑な家庭事情を抱え生きてきた人。物語の背景には現代社会の韓国に存在する家庭環境の問題など普遍的な社会課題も垣間見られ、寓話的なイメージもありながら貧困などの問題に対し深い考えを想起させられる物語となっています。一方でラストにはポジティブなイメージが作り上げられており、辛辣な物語ながら前向きな考えに導かれる印象があります。

『秘密にしておく』(国際短編映画コンペティション)


2023年製作(インドネシア映画)/23分25秒
監督:イフサン・アフディアット
出演:ヴォニー・アングライン、マイシャ・カンナ、ワンギ・ホエッドほか

イスラム教徒で一人親の母と、イスラム寄宿学校に通う娘が、つかの間の対面の際に交わした会話の中で自身の境遇にまつわる「生きづらさ」を明かしていくさまを描きます。

国際間の相互理解が進む一方で、人種や宗教といった「自身では選べない境遇」における困難に苦しむ人々の姿が非常に印象的であり、国という垣根を超えた理解を深く考えさせられる物語であります。ちなみに余談ですが、娘が母親に送った食品の要望リストの中で「ハラル」というキーワードが出てきます。これは「神に食べることを許された食べ物」を示し、イスラム教徒の人が生活する上では重要なもの。国際間の理解という意味では貴重な知識の一つでもあります。

『囲碁教室』(国際短編映画コンペティション:ヒロシマグランプリ)

(C)Roger Xue

2023年製作(中国映画)/23分25秒
監督:ロジャー・シュエ
出演:ヤン・レハン、パン・シューヤオ、ジュ・チューボーほか

囲碁の才能を持つ子供が多く集まる囲碁教室にやってきた一人の少年が、多くのライバルの中で競争を繰り広げる中で出くわした一つの事件により友情を失っていく光景より、競争社会における生きづらさを問います。

特に中国は「高考(ガオカオ)」と呼ばれる大学入試の統一テストなど、若い世代より過酷な競争社会に置かれることを社会問題として取り上げられるケースもあります。本作の光景はそのような社会の一端を表しているようでもあり、キャストのほとんどが子供ながら非常に秀逸な演出で、物語の論点を強く浮き彫りにしている印象であります。

『私を描いて』(ヒロシマEYE)


2024年製作(日本映画)/20分
監督:喜安浩平
出演:小林桃子、滝澤エリカほか

マンガを描くことだけが取り柄の一人の少女。彼女は一つの作品を発表し高い評価を得ますが、その作品は自身の身近な人を風刺した作品だと、周囲の人間から非難囂々。一方で彼女の才能を認め自身の姿を描いてほしいという優等生からの声を受け、少女が優等生の知られざる裏の一面を知っていく姿を描きます。

主人公の女の子は一芸に秀でた才能を持ちながらも非難を受け、学校生活の中で皆に避けられる嫌われ者的存在。周囲の人間とは隔離された状態にあるからこその目線が非常に特徴的であり、「普通であるということ」が本当に正常なのか、などとさまざまな疑問を想起させられるものとなっています。ラストのシーンは非常にインパクトが強く、その印象を深く焼き付けられる物語となっています。

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