スポンサーリンク

映画『ハロウィン』シリーズの最終章は「人間自身の怖さ」の根源を描いた異色作

Gift図書館
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS
この記事は約6分で読めます。
スポンサーリンク
当ページはプロモーションが含まれています

まもなくやってくる「ハロウィン」。これはキリスト教の万聖節の前夜祭(All Hallow’s evening)が由来とされています。

この日は日本のお盆のように「死者の霊が家族に会いに来る」と信じられていた一方で、同時に悪魔や悪い精霊なども訪れるため、合わせて悪霊をお祓いするということが起源であるといわれています。

そしてどこか不安すら感じられるこの時期をターゲットとして描かれた映画『ハロウィン』シリーズ。70年代より大きな盛り上がりを見せたホラー映画ジャンルの中で、一つの金字塔を打ち立てた、ある意味「名作」ともいえる作品であります。

このシリーズが「名作」とされるゆえんは、単に「怖い」「斬新」などといった単純な観点による評価で終わらず、「人間の奥底にある、本当の恐怖の根源」といったようなポイントが描かれているところにあります。しかもその根源は、単に「怖い」というだけのものではなく、社会の中で生きてく上での課題のようなものを考えさせられるものであります。

シリーズは初作より40年以上が過ぎ、2022年10月に公開された『ハロウィン THE END』でついに物語の終焉を迎えました。この最終章こそはまさに「恐怖」の存在の奥にある真理に深く突っ込んだ作品であるといえるでしょう。今回はこの作品にスポットを当て、作品に描かれた「恐怖の根源」から、を考えてみたいと思います。

もちろん「楽しいハロウィン」を過ごされることも非常に結構なことでありますが、今年はぜひこの作品をはじめ映画ファンに大きな衝撃を与えた『ハロウィン』シリーズより、一味違ったハロウィンの過ごし方を考えてみることもオススメします!

スポンサーリンク

『ハロウィン』シリーズとは

『ハロウィン』シリーズ概要

1978年に公開された映画『ハロウィン』に始まる、アメリカのホラー映画。リメイクを含め13本の映画作品からなるもの。ホラーやサスペンス作品で絶大な人気を誇るジョン・カーペンター監督がその初作にて監督・脚本を手掛けました。

アメリカ・イリノイ州の架空の街ハドンフィールドを舞台に、6歳で実の姉を包丁で刺殺し15年も精神病院に収容されたマイケル・マイヤーズという男性が、裁判の聴聞の途に脱走をはかりハロウィンの夜に惨劇を巻き起こすという物語。シリーズでは初作以降(第三作を除いて)、このマイヤーズが何度も復活し、新たな惨劇を生み出す新章を描いています。

「連続殺人を続ける特徴的なキャラクターが登場する」という意味では、のちに続く「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」といった人気ホラーシリーズの走りにもなった作品であります。

カーペンター監督は書作に続き第二作を担当、更に第三作で制作を担当したあとはシリーズの制作から離れましたが、2018年に公開された書作と同タイトルの作品「ハロウィン」で音楽担当として復帰を果たしました。

生身の『人間』がモンスターに

そのショッキングな演出と目をそむけたくなる血糊などの特殊効果が目を引いたこの時期のいわゆる「スプラッター・ムービー」。しかしこの「ハロウィン」シリーズは少し特徴的な物語づくりがなされていました。

それは、本作に登場するモンスター、マイヤースという人間はあくまでも「人間」であること。『13日の金曜日』のジェイソンは何度体を切り刻まれ、殺されようがなにかのきっかけで生き返ってしまう不死身モンスター。『エルム街の悪夢』のフレディーは夢の中で人を襲う謎の怪人。

一方でマイヤーズは、多少「体が丈夫過ぎではないか」という印象はあるものの(笑)、基本的に設定として生身の人間であることはブレていません。

もちろん同じように生身の人間が連続殺人を犯す、というホラー映画は割に多く存在しますが、どちらかというとミステリー物語的に「なぜ彼らは殺人鬼となったのか」と最後に種明かし的なエピソードが語られることがほとんどです。

対してこの作品には物語の最初よりどこかに「マイヤース自身の視線」を取り入れたもの、つまりマイヤース自身が連続殺人に駆り立てられた意味のようなものが彼のいでたちより感じられるものとなっており、エンタテインメント的な要素だけにとどまらない、社会的なメッセージ性すら考えられるものとなっています。

スポンサーリンク

シリーズ最終章で描かれた『本当の恐怖』

そして2022年に公開されたこの物語の最終章では、それまでのシリーズから一風変わった展開が織り込まれました。

この最終章に登場するメインキャラクターは、シリーズで最も長く主人公を務めたローリー・ストロードという女性、そしていわくつきのエピソードにて冒頭より登場するコーリー・カニンガムという二人。

ローリーは初作よりマイヤーズの魔の手に襲われ、生き延びながらもその境遇の中でいつしか街の人、そして家族からも「変人」扱いを受けてしまいます。一方のカニンガムは、全く関係のない事故で一人の少年を死なせてしまい、無実とはなったものの街のハロウィン伝説と絡められ鼻つまみな存在として街の人たちから虐げられていました

そして物語で、カニンガムはとあるきっかけにより彼自身が「怪物」となってしまいます。一方のストロードはマイヤーズとの呪われた人生に対し最後に決着をつけますが、そのエンディングはかなりショッキングでもあり、見方を変えると彼女は街の人間とともにダークな方向へと心を蝕まれたようにも見えます

もちろん物語のカギとなるマイヤーズも今回物語に登場はするものの、それはどこか亡霊、遺恨のような存在で描かれ、物語に登場する人たちはその「呪い」に侵された印象でもあります。

この最終章では本当の恐怖である「連続殺人を起こさせる要因」、人をモンスターと変えてしまう要素を想起させられます。最も印象的なのは貧富の差や認識の行き違いなどといった本質を隠してしまう要素。こういったものが恐ろしい悲劇を生み出す。この物語には、そんな社会に対する痛烈なメッセージが隠されているようにも見えます。

補足:シリーズの柱となる本質とは

ちなみにシリーズの第四作〜八作についてはどちらかというと『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』のような、多少常軌を逸した殺人鬼のように描かれ、のちにカーペンター監督が合流した2018年の作品で、マイヤースは再び「人間」であることを取り戻したような印象で描かれています。

この作品の前に、ヘヴィーメタルバンドのホワイト・ゾンビのメンバーであるロブ・ゾンビが監督を務め作り上げられた作品『ハロウィン』『ハロウィンII』が発表されました。

しかしオリジナルの『ハロウィン』シリーズから趣が変わったことに対してカーペンター監督からはよい評価を受けていないともいわれています。作品では若干超常現象的なイメージがあったり、血生臭さが強かったりと、確かにオリジナル作品とは異なる性質も感じられ賛否が分かれるのが納得のいくところであります。

このように、シリーズは途中で作品の性質が紆余曲折しながらも、80年代に発表されたホラー作品で多く描かれた「連続殺人鬼の恐怖」的な印象からは異なり、単に「怖がらせる」という方向性では終わらない、人間という存在の怖い面をうまく表現している印象があります。

Gift図書館
スポンサーリンク
この記事を書いた人
黒野 でみを

40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきました。
幼い頃からさまざまなコンプレックスや生きづらさを抱えながら、自身の道を見つけるために「ライター」という生き方を選んで生きてきました。
誰かの生き方に小さな灯がともせるようなコンテンツが提供できれば幸いです。

黒野 でみををフォローする
黒野 でみををフォローする
タイトルとURLをコピーしました