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ドラマ「かぞかぞ」に見た、私たちが進むべき道

家族の後ろ姿 生きづらさを抱えて
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7/16に最終回を迎えた、NHKBSプレミアムドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』。愛称「かぞかぞ」。

こんなに涙して、笑って、何かをもらったドラマは、これまでになかったように思う。

それは私が障害者だからなのだろうか。

いや、普遍的な何かが詰まっているのだと思う。

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当事者役を当事者が演じる

カフェ

なんとなく観始めたのは第2話ぐらいだったか。録画したドラマを母が観ていて、たまたま私も横で一緒に観始めたのだった。

最初は少しコミカルで、登場人物が関西弁で、クスッと笑えるツボもあり面白いな~と思ったのだった。

主人公・七実(ななみ)の弟・草太(そうた)がダウン症なのだが、それをダウン症の役者さんが演じているところに、これまでの日本のドラマと違うものを感じた。

障害者の役を、同じような障害を持つ当事者が演じるということはこれまでのドラマにはあまり無かったし、何よりも障害を持つ俳優さんが少なかったのもあったのかもしれない。

もちろん、撮影ではこれまでの撮影方式とは違う様々な困難があったことが、後日に観た別の番組では語られていて、サポート役のスタッフが丁寧に段取りやセリフを説明して、演技してもらいやすいよう工夫されていたんだとか。

多大な努力の上に積み上げられた作品だったんだなぁ、と本当に感服する。

だけど、CMやドラマの中で当たり前に障害者が存在している外国のメディアに比べて、日本では、障害者がほとんど登場せず、登場しても特別な存在として描かれているものが多かったというのが、日本でのマイノリティーへの扱いを物語っているようだと私なんかは思っている。

草太だけではない。草太が働くカフェの、ダウン症がある同僚たちもみな、当事者が演じている。七実が最初に働く会社の代表は車椅子だし、聴覚障害がある同僚たちも居る。たぶん皆さん、当事者のかた。

ごくあたりまえに、そこに居て、同僚としての会話をして、仕事の話をして。

それは健常者だからとか、障害者だからとかいう線引きは、何も要らない。

そういう風景をドラマの中で表現してくれているのだった。

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障害があることが「特別」でもなんでもない

乱れたデスク

岸田奈美さんが書いた自伝的エッセーをもとに、ドラマ化されたとのことですが、エッセーには無かった部分を楽しく料理したこのドラマは、伝えたい事がたくさんあり過ぎて説明しきれない。

でも私が、すごくいいなと思ったのは、いわゆる「障害者」認定はされていないけど、「発達障害」ぽい特性を持つ人たちも登場すること。

じつは、七実もそうだよね。人との会う約束はすぐ忘れるし、経費として提出しなけりゃいけない領収書なんて整理できず放ったらかしだし、親友を傷つける言葉を何気なく言っちゃうし。
甘栗ばかりを食べ続けていて、落ち着きがないけど、なんか素晴らしい才能を秘めていそうな小野寺さんとか。

ああ、私がいつも振り回されているあの人にそっくりだわ~とか思いながら、クスッと笑ってしまう。

こういうクセ強めの人たちが、ごく自然に社会で居場所を作っている。迷惑をかけて怒られながらも、許し、許されて「ま、そんなこともあるよね」と。

それぞれが、「自分を偽らずに」自然体で生きられること。

それだけが有るか無いかで、この世の中は変わっていくんだろうな、とここ最近、特に強く思うんだ。

「知る」ことの大切さ

だけど、実はそんなに堅苦しいことを言いたいのではなかったんだよね。随所に笑いのツボが仕込まれていてい、普通にエンタメとして楽しめるから、難しい事を考えずに、いちどドラマを観てほしい。それだけ。

それぞれが感じるものがあって、それでいいと思う。

私は車椅子ユーザーだから、ドラマの中で母・ひとみが七実とお出掛けをして数多の色んな出来事に辟易し「もう、死にたい…」と泣きじゃくるシーンに、「そうそう、そうなんだよな」といちばん共感した。

道路のちょっとした段差につまずいて動けなかったり、「すみません」ばかり言っていなきゃいけなかったり、車椅子あるあるが、まじにリアルに描かれていて、自分と重ね合わせて泣いてしまった。

車椅子ユーザーじゃない人には分からないポイントだろうけど、そういう人達には「へぇ~、車椅子ユーザーって、こんなことに苦労しているんだ」と知ってもらうだけでいい。

「知る」ことが相手への気遣いに変わる。

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そのひとことがあるだけで

男性に抱っこされる女児

亡くなったお父さん役の錦戸亮さんが、とても良い味を出している。

幽霊?というか、いつも普通に家族の中にいて皆を見守っていて、非常に重要な存在として生きている。あまり言葉を発しない場面でも、その表情が全てを物語る。

草太にはいつもパパが見えていて、事あるごとにパパがあたかもそこに居るかのように、パパとしゃべっている。

草太がパパの事を恋しいあまりに見えているのか、パパが草太のことが心配で近くに居るのか。どっちなんだろうとか思っていたけど、どっちもなんだろうな。

第9話で、自立しつつある草太がパパに言った「今までありがとうございました」。

そして泣きそうなパパの顔。ここで号泣だった。

「だいじょうぶ」

「この道で合(お)うてるで」

あなたの愛する人には、こうやって言ってあげてください。受け止めてあげてください。

そのひとことがあるだけで、救われるのです。

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