発達障害を抱えるライター、くまたろうです。
発達障害に関する本は数多く存在しますが、本書『発達障害グレーゾーン』は「発達障害の認定を受けることができなかった人」、つまり「グレーゾーン人」の生きづらさを紹介しています。本書は岡田尊司氏によって執筆され、彼の精神科医としての経験から、発達障害に関する正しい理解と克服法が詳細に記されています。
発達障害は障がいではなく特性とされていますが、それに伴う二次障害は困難をもたらします。本書では、その生きづらさを引き起こす要因や問題について取り上げ、適切な支援が受けられない場合における社会的困難についても言及しています。発達障害は単に個々の問題として捉えるのではなく、社会全体で正しい知識を持ち、不当な偏見や差別を防止することが重要です。
あらすじ
本書『発達障害グレーゾーン』は、発達障害を抱える人々によく見られる行動を章ごとに分類し、それぞれの原因や実生活での困難事例、対処法が詳細に記載されています。例えば「空気が読めない人たち」ど題された章では、様々な空気が読めない事例を紹介し、その原因が紹介されています。
私自身、発達障害の診断を受けた身としても、本書を読んで多くの章で「なるほどなぁ」と納得せざるを得ませんでした。著者が解説する脳機能のメカニズムを通じて、「あの時の言動はこのような仕組みで起きたのか!」と合点がいく瞬間もありました。
本書は、生きづらさを抱える人にとって癒しの本となる可能性があります。なぜなら、社会とうまくいかない原因が自分自身の人格の際にされてきた過去が、多少ならずともあるように感じるからです。本書は、社会に馴染めない原因が脳機能の問題であることと理解でき、前向きな1歩を踏み出すきっかけとなる可能性を秘めています。
もちろん発達障害を抱える当事者だけでなく、発達障害の子供を育てる親から、発達障害とは無縁の人々まで、幅広い読者に向けた内容となっています。
レビュー
表紙を見た時、私は誤解してしまいました。「発達障害当事者が自身の生きづらさを描いたエッセイ」と思ってしまったのです。しかし、実際は精神科医である著者によって書かれており、信憑性と実用性に富んだ内容であることがわかりました。
岡田尊司氏は精神科医としての専門知識を駆使しながら、発達障害の当事者に寄り添うスタンスを貫いています。同時に、現実的なアドバイスや、発達障害の診断が適切に行われるべきであるという精神科の現場に対する警鐘も鳴らしています。さらに、ビル・ゲイツやトム・クルーズなど、発達障害を抱えながらも成功を収めた人々の実例を挙げることで、「自分にも才能を伸ばすチャンスがあるかもしれないし、素晴らしい人生を送ることができるかもしれない」という前向きな気持ちを抱かせてくれます。
発達障害を抱えるライターの感想
私はこれまで多くの発達障害に関する書籍を読んできましたが、本書はその中でも最も素晴らしいものでした。その理由は、医学的な根拠に裏打ちされた内容であるからです。確かに、「医学的な情報が欲しいのならば、医療機関に相談するべきだ」と思われるかもしれません。
しかし、実際には医療機関に行っても、主治医との相性が合わないという大きな問題が待ち受けています。医師は豊富な知識を持っている一方で、共感力においては期待外れなことが多いのです。そのため、医師の言葉に耳を傾けることができなかったり、納得できなかったりすることがあります。
本書は感情的な偏りがなく、発達障害に関する理解を深めることができる非常に有益な一冊です。また、現役の精神科医がグレーゾーンにおける苦しさについて記述していることにも感銘を受けました。
まとめ
『発達障害グレーゾーン』は、発達障害に関心のある当事者や家族だけでなく、学校関係者や会社の管理職にも必読の書籍です。
かつては認知症が「痴呆」と呼ばれ、恥ずべき病とされた時代もありましたが、現在では誰もがかかりうる病気として認識され、支援の幅が広がりました。
同様に、発達障害も社会の理解が進み、個々の人間としての尊厳が保たれる社会を築くことを願っています。本書を通じて、発達障害の理解を深め、差別や偏見をなくし、すべての人々が生きやすい社会を実現できることを願います。