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インタビュー講座 番外編2 取材の現場で見られる「あるある」が示す「取材のタブー」

ライフワーク
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これまでは「インタビューのコツ」「文章作成」「起こし方」など、取材から執筆までの基本的な作業に関して説明をしてきました。

今回紹介するのは、私が現場で遭遇した「あるある」的なケースから見える「取材のタブー」です。ここで挙げたケースは一見笑い話のようなお話ですが、よくよく考えると取材記者、ライター、ジャーナリストとさまざまな立場の誰もが注意すべきポイントであるといえるでしょう。

タイトルに「タブー」と銘打ちながらも「あるある」とはこれいかに?そう、これらは意外にみんなやってしまいがちなミスなのです。(私もしっかり経験したことがありますし…)

今回「タブー」として挙げる事例は、主に報道に関わる部分で「発表する情報」の信憑性に関わってくる非常に重要なポイントでもあります。こうした現場に関わる方々にはぜひ参考にしていただき、さまざまなケースにおいて自身のお仕事へ活用していただければ幸いです。

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ネットの情報をうのみにしない


スポーツ誌や芸能関連の短いニュースで、「最近、この○○は…」と芸能人を名指しで取り上げ、当人の近日の行動から「現在、彼の生活はこんな状況にある」みたいなことを勝手に推測している記事をたまに見かけることがあります。

もちろん、ある程度裏を抑えた上で考えた「推測」ではあるので、一つの参考としては捉えられるかもしれません。しかしあくまで「推測」に過ぎない情報ですので信憑性に欠けますし、その情報をうのみにして取材などに活用してしまうと痛い目に遭う可能性があります

これは某有名な歌舞伎役者が、新たな舞台イベントをおこなうにあたって行われた記者会見会場で、最後に実施された囲み取材でのこと。

ちょうどそのころ、役者さんには自身のブログ更新があまりにも頻繁におこなわれているため「金儲けのために(本業そっちのけで)ブログ更新ばかりに集中しているのではないか」などといったウワサがネット記事で流れていました。

そんな情報をうのみにしてか、役者さんに直接話をうかがっていた某テレビ局の記者の方はこんな話の切り出し方を…

「最近はブログの更新が多いようですが、ブログ以外は何をされているのでしょうか…」

役者さんはちょっとあっけにとられながらも、“ははぁ、ネットの情報の受け売りだな”と気づいたのか「そりゃ『歌舞伎』ですよ。歌舞伎ばっかりやっています」と返答。

大々的に会見を開くほどのイベントですから、舞台に向けて大忙しで「歌舞伎ばっかりやっている」というのはあたりまえでしょう。

このケースではいいように相手にあしらわれて終わりですが、こういった質問の仕方は、「歌舞伎役者」という相手の立場を尊重していないようにも感じられ、ときに冗談の通じない方でこのケースに陥ってしまうと痛い目にあう可能性もあるでしょう。

もっとも、テレビなどの取材は敢えてこうした「炎上」を狙うケースもあるようですが、基本的には「勝手な推測」を、さも正確な情報として頭に入れ、取材に持ち込んでしまうのはタブーであります。

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こちらが望むワードを「意図的に」言わせない


インタビュー取材などをおこなうとき、質問の筋道を考え過ぎてついこちらが「こうしゃべってもらいたい」という内容を相手に言わせてしまうケースが時々あります。

特に最近はSEOを意識した記事執筆の傾向も強く、囲み取材などをおこなう際に聞き手が流行り言葉を相手に言わせるように仕向ける傾向も見られますが、実際にはこれも行き過ぎた場合にタブーとなるといえるでしょう。

インタビューは相手の自然な思い、本心を引き出すことに意味があり、こちらの思うことを意図的に言わせるのは、その目的から外れる可能性があるからです。

これも以前の取材の経験ですが、アイドルグループを卒業し「ミュージシャン」としての立場で新しい出発をおこなうという一人の女の子に対し、そのライブステージ前に囲み取材をおこなう機会がありました。


某スポーツ紙の聞き手はその女の子が「ミュージシャン」としての活動を始めるとともに、アイドルグループ時代に行っていたダンスボーカルという活動も続けるという点を強調し、ちょうど野球の大谷選手がアメリカのメジャーリーグに移籍し話題となった時期であったこともあり、とにかく大谷選手を彷彿するワード「二刀流」を言わせようとコメントを誘導していました。

この子は苦笑いしながらもサービスとばかりに「二刀流で頑張ります!」と言葉を口に。取材後、どこのメディアもこのレポート記事に、この女の子の今後をこぞって「二刀流」と記していました。

もちろんこの子が以後「二刀流」で頑張られていることを願っていますが、もし本心に「『どっちも』なんてそれほど思っていないんだけどな」「片方だけ頑張りたいんだけど…」なんて気持ちがあったら…などと考えると、メディアから出てきた記事に違和感を覚えてしまうところであります。

「話を聞く」というのは、あくまで聞きたい内容を引き出すための材料だけを渡し、喋り手本意で語ってもらうのが基本であり「こちらの願っていることだけを言わせる」のは、引き出すべき内容が出てこないことにつながるのではないかと思います。

社交辞令的に、このような発言に導く人もときどき見かけますが、あくまでほどほどにというところでしょうか。

名前を間違えない


当然のことですが、「記事に記載する人名」は正確に

これは私がしでかした過ちで、某アイドルグループを取材したときの話。取材対象の事前調査を怠りほとんど情報を眺めておかずに現場に赴いてしまったときのことでした。

ここで示す注意点は、相手が一人ならまず問題ないと思いますが、複数の場合には注意が必要であるということです。

某テレビ番組のプロモーションということで、番組収録が終わった後に報道陣からの囲みをおこなうという取材でしたが、知らないなりに私は準備として「グループのメインとなるメンバーを何人かチェック」だけして取材に向き合いました。

ところが思った以上に皆さん、だれもが貪欲に話の中に入り込もうとアクティブにアピールされるので、正直困惑してしまいます。


「むむっ、チェックしていない子がしゃべってるな…どうしよう…」焦りながらも急いでメンバーの配置図を作り、あとでコメントをとった女の子について、公式のホームページから「たぶん、この子だろう…」という女の子の写真を探し出し、名前を確認する始末。

その結果記事が出た際に「この子、他のグループに移籍していてもうここにはいないはずなんだけど…」などと指摘が入ってしまい誤記が発覚、編集さんからこっぴどく叱られてしまいました。

以降、インタビュー取材などで相手が複数の場合には事前に相手の顔と名前を全て確認し、インタビュー直前には配置図を用意し、余裕があれば最初にそれぞれの名前を確認させていただき(初対面であれば、このような確認はそれほど失礼でないかと思います)、誤りのないよう努力しています。

なにしろミス記事が出たあとには信頼性を失ったせいか、しばらくお仕事の依頼もかなり減りましたしね…この仕事はやはり信頼が一番ですから。

補足:表記の誤りに注意

近年はPCで執筆、入稿する場合がほとんどですが、PCの入力機能に付随する辞書機能により、あまり漢字の語彙がない人でも文章入力をおこなうことは容易になった反面、これに頼るがために表記のミスを誘発してしまうことがあります。

たとえば音楽グループ、ゴールデンボンバーのメンバー、喜矢武(喜屋武) 豊さん。現在、公式ホームページではどちらの表記でも問題ないことを示すためにこう書かれているのかもしれませんが、以前は「喜矢武豊」の表記で統一されていました。

この苗字の「きゃん」という部分ですが、沖縄県出身者に多い「喜屋武」という表記と間違いやすく(ちなみに喜矢武豊さんは東京都板橋区出身とのこと)、以前この表記で私も誤ってしまい指摘を食らったことがあります。

実際に「きゃん」と入力し変換をおこなうと、やはり第一候補として「喜屋武」が出てしまい、あまり考えずに入力してしまうと見事にバッテンを食らうことになります。

表記は資料や公式ホームページなどで正しい名前をちゃんと確認して記載するようにしましょう。

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この記事を書いた人
黒野 でみを

40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきました。
幼い頃からさまざまなコンプレックスや生きづらさを抱えながら、自身の道を見つけるために「ライター」という生き方を選んで生きてきました。
誰かの生き方に小さな灯がともせるようなコンテンツが提供できれば幸いです。

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