こんにちは!くるみです。
一般就労と、作業所での就労。どちらも経験した私が「作業所」(就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所)の知られざる世界を皆さまにお伝えしていきます。
今回は、一般就労の実際の統計を見ながら、私が作業所で感じたことをあわせて書いていきます。
※辛口な意見も書きますが、各々の作業環境や障害によっても異なりますので、あくまでも私の経験した範囲での事とご承知おきください。
就職者数の統計
作業所から一般就労へ移った人はどれくらいいるのか、ご存知でしょうか。
上記の厚労省のリンクには令和元年度の数値が最新情報として載っています。
就労継続支援A型と就労継続支援B型の利用者合計約34万人のうち、一般就労したのは約8,500人でした。
全利用者のなかで、約2.5%ということになります。
これは少ないと思いますか?それとも多いと思いますか?
普通に考えると「少ないね」という印象ではないでしょうか。
作業所は、何を目指しているのか
厚生労働省で定めている作業所の定義は、以下のようになっています。
・就労継続支援A型
一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
・就労継続支援B型
一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
「一般企業に雇用されることが困難」と書かれていますが、一般就労する前のステップとして作業所を選択する人にとっては、一般就労は必ずしも手が届かないものではありません。
一般就労を本気で考える人にとって、作業所とは、自分の可能性を一緒に探求し、夢に向かってサポートしてくれる存在となるでしょう。
一般就労に必要となるのは、社会人としてのマナーや自己管理、集中力、時には実践的なスキル。
そして、自分の障害特性を客観的に捉え、どのような工夫をすればどのような仕事ができるのか。それを自分自身が理解しておくことも、働くうえではとても大切ですね。
一般就労といっても、フルタイムか、パートタイムかによっても難易度は変わってきます。
障害特性から、長時間の労働が向かない人もいますので、体を壊さずに働けるようそれぞれに合った仕事や職場を選ぶ必要があります。
そもそも一般就労を目指さない生き方
作業所に通うのは、一般就労を目標としている人ばかりではありません。
障害の程度や各種事情により一般就労までは望まないけれど、何か就労することで社会参加したい。工賃(賃金)を得て、やりがいを感じたい。実は、そのような利用者がほとんどなのではないでしょうか。
特にB型作業所では、そのような利用者が多いようです。
私が在籍していた作業所でも就職したのは一年に一人もいませんでした。
特別支援学校を卒業して18歳頃から20~30年間、作業所に居続けた人達は、今さら外の世界で働こうという気持ちは無く、日々の穏やかな流れを維持することが大切なようでした。
障害の程度が重かったり、新しい環境へ踏み出すことに恐怖感があったり、お小遣い程度の低い工賃でも構わないと容認していたり、事情はさまざまですがずっとこの先も作業所に居場所を求めているようでした。
社会に出て荒波に揉まれてしんどい思いをするよりも、少しの工賃とその他の収入(人によっては障害年金や生活保護、はたまた親のすねかじり)で生きていくほうがいいよ~という選択肢もまた、ひとつの生き方です。
B型で物足りない人(もっと稼ぎたいという人)はA型のほうへ移行されるのもよくあるパターンです。
一般就労を目指す人とは
一般就労していたけど作業所に移ってきた人や、中途障害になって作業所に来た人は、一般就労へもう一度戻りたいとの意欲を持っている人が多かったです。
一般就労の経験があるため、再び一般就労する姿がイメージしやすいとか、自分の中で何をどうすればいいのか目標が見つけやすいのかもしれません。
また、収入面での違いも多く影響しているでしょう。
一般就労していた時と比べてB型作業所は、あり得ないほど工賃が低いですので。
自分の到達点をイメージしよう
一般就労を目指すのも、ずっと作業所に居たいというのも、どちらの選択肢も間違いではありません。
大切なのは、自分の障害とともに生きていくうえで、何を喜びとするか。でしょう。
一般就労出来る人は、どんどん就職したほうがいいと思います(でも決して、心身に無理させ過ぎないでくださいね)。作業所は良い意味でも悪い意味でも「緩い」です。
例えばどんなに作業が残っていても、夕方の終業時刻が来れば「切り上げて帰ってください」と言われます。一日の作業時間数が決められているからです(例外的な取り扱いなども、もしかしたらあるのでしょうかね…?)。
納期に間に合わせる必要がある時は、残った作業を職員が担うこともよくある話です。
つまり、利用者にとって、最後までやり遂げるという責任感が生まれにくい環境にあります。もちろん、決められた作業時間内で精一杯できるところまでをやり抜くという姿勢なら、それは最後までやり遂げたと等しいぐらいの遂行能力が養われていると考えて良いのだとも思います。
でも、何があっても職員がヘルプできるように常に足元のネットで守られているんだというのが、一般就労には無いんですよね。だから「福祉」の範囲なのですけど。
必ずしも悪い事ではないんですよ。障害があるがゆえに、やはり何らかの配慮が必要だから作業所なんだし。甘えているわけじゃなく障害からくるものが原因で、作業を遂行できない場合もあるわけだし。そういった場合には、職員によるフォローというセーフティーネットが必要なのです。
ただ、一般就労を経験してきた私からすると、このセーフティーネットは安心で快適なのだけれど、なにかが物足りない(笑)。
「もっとスリリングに、がむしゃらに頑張る」「この仕事をするとこれぐらい儲けが出る、または非効率だという意識が常に働く」というような刺激を求める私は、やはり作業所には不適合者なのかもしれなかった(作業所じゃない世界では、当たり前のことなのですけどね)。