Gift by Giftedのライター「くまたろう」と申します。私は大人の発達障害を抱えている、ひきこもり経験者です。現在、私は在宅でライター業をしています。他には地元で「ひきこもり支援活動」もしています。
今回、ご紹介する本は『さかなクンの一魚一会〜まいにち夢中な人生!〜』です。
さかなクンは非常に個性的な魅力を放つ方です。少し高い声に、ハコフグの被り物。圧倒的な魚の知識で私たちを楽しませてくれます。
しかし、仮に私たちがさかなクンとして生まれてきたら、同じような人生を歩めたでしょうか?私だったら、少し人と変わっている自分に悩んだかもしれません。周囲の人から「魚のことばかりやってたらダメよ!」と言われたら渋々と従っていたかもしれません。そして、生きづらさを抱え、魚とは無縁の人生を送ったような気がします。
この本は、人と違っていても、「何か好きなことに夢中になって、前向きに生きることの大切さ」を教えてくれます。生きづらさを抱えていると、前向きになることは難しいとは思います。そんなとき、さかなクンのポジティブなパワーから、何か生きるヒントがもらえるような気がします。
こちらの本が原作の映画も公開されました。
さかなクンとは
私は、さかなクンの大ファンです。知れば知るほどカッコいいい方です。まずは彼の魅力をご紹介します。
さかなクンは小学校の文集にこう書いていました。
「水産大学の先生になる」
子供の頃の夢を、大人になって叶える人はごく僅かのように思います。多くの人は現実を知り、普通に生きていこうとします。
さかなクンは幼い日の夢を、とても高いレベルで叶えています。しかも、魚博士になるために「受験勉強を頑張る!」といったアプローチではなく、ひたすら魚に時間を費やして、その夢を掴み取りました。
現在のさかなクンの経歴をざっくり紹介すると
- 東京海洋大学名誉博士
- 東京海洋大学客員教授
- 外務省、農林水産省、環境省などの公的なお仕事
- 日本ユネスコ国内委員会広報大使
などなど。これは、ほんの一部に過ぎません。
しかも、中学生の頃は国内で初めて、カブトガニの孵化を成功させるという偉業を果たしています。そして高校生の頃に「TVチャンピオン」という一般人が専門性で競い合う番組に出演し、その才能と魅力が全国区となります。
しかし、すぐに夢を掴めたわけではありません。ペットショップの住み込み店長をやったり、アルバイトを転々とする生活を余儀なくされます。その辺りは本書でもしっかり描かれています。
ところでさかなクン。吹奏楽部に所属していた事があり楽器の演奏もかなりの腕前です。何でも、入部の動機は「水槽部」と勘違いしたからだとか。それでも、しっかり演奏を習得してしまうところに、彼の真面目さや探究心の深さが垣間見れます。
好きに勝るものなし!
「好きに勝るものなし!」著者の前書きで書かれているメッセージです。この本のテーマでもあります。
彼は好きすぎる魚を追求するあまり、周囲からは異端の目で見られてしまうことがあります。
しかし、そんな周囲の好奇の視線などどこ吹く風で「普通ってなに?」というスタンスを崩しません。それは大人になってからも変わりませんでした。
私は大人になって「逆に普通に生きることの難しさ」を肌で感じました。しかも「普通」という価値観は不変ではありません。一昔前の「普通」の価値観とは「いい大学に入りいい企業に就職する」「そうすれば終身の雇用が保障される」「その後は潤沢な年金で暮らしていける」。そんな価値観だったのではないでしょうか。今は、そんな「普通」は無くなってしまいました。そして「普通」ではない生き方を選んださかなクンに、私たちは癒されているように感じます。
魚の世界のいじめ
巻末に「魚の世界のいじめ」のことが書かれています。
メジナという魚は、海の中では仲良く群れを作って生活しているそうです。しかし、狭い水槽の中で飼育していると、1匹を仲間はずれにして、攻撃し始めるのだそうです。それを見たさかなクンは、その魚を別の水槽に移したそうです。
すると、残ったメジナ達は、また新しい1匹をいじめ始めるのだそうです。今度は、いじめっこの魚を水槽から出したそうです。それでも誰かが、またいじめを始めてしまうのだそうです。
これは人間社会にも当てはまるなと感じました。生き物は、小さな世界に閉じ込めらると、いじめを始めることが理解できます。
さかなクンは、作中でこう語っています。
「小さなカゴの中で誰かをいじめたり、悩んだりしても楽しい思い出は残りません。」
「外には楽しいことがたくさんあるのに、もったいないですよ。」
「広い空の下、広い海へ出てみましょう。」
まとめ
世の中には、さまざまな「生きづらさ」があると思います。その対処法として、専門書で自身のことを勉強したり、自助グループに参加して、仲間や居場所を作る方法があります。
この本は一見すると、上記のどちらにも当てはまりません。しかし、少し視点を変えるだけで、今抱えている「生きづらさ」を変えれる可能性があることを教えてくれます。
気分転換も兼ねて、是非お手に取ってみてください。