以前「インタビュー講座」「文章作成講座」などと銘打ち、私がこれまでライターとして活動してきた中で学んだスキルなどの一部を紹介してきました。
これまでの講座では、文章作りまでの基本的な手法について論じてきましたが、今回はライティングのスキル向上、ライターとしてのブランディングというポイントに視点を置き、身近なものを活用することによってできるスキルアップの方法を考えてみたいと思います。
作り上げてきた実績をブラシアップする
何らかのきっかけをつかみライターとしてのキャリアをスタート、仕事が増えてくると、どうも“書きっぱなし”という状態に落ち込みがちとなる傾向があります。しかし時には立ち止まって、これまでの実績、書いて公開してきたものをまとめて整理してみましょう。
この効果の一つは、整理したものが「自分のポートフォリオ」となるということです。ライターは常に新しい仕事を求めていかなければ立ち行かないという厳しい現実があるわけですが、依頼者から仕事がもらえるかどうか、その判断の一番大きな材料がまずこのポートフォリオであり、欠かせないものです。
一方で整理したものを改めて自分で見返すと、意外に「自分はライターとして今、こういったものが書けるんだ」と得意ジャンル、実力を自分自身で知ることもできます。時には現時点までの軌跡を振り返り、書いたものに対して「こんな風に書けたな」「こうすればよかった」というポイントを整理していけば、ライターとしてのスキルを磨くよい過程となるでしょう。
自身のファン(フォロワー)を増やす
こう書くと「ん?」と思う人もいるかもしれませんが、新たな仕事を受けられるかどうかの目安として、やはりこれまで書いてきたコンテンツや築いてきた実績に対して第三者がどのような評価をしてきたか、その反響の大きさはやはり大きなポイントになるといえます。
残念ながら、私は「ライターは文章を書くことが重要、そんなことが必要なのか?」と考え、こういったことをおろそかにしており、今になってその必要性を痛感しています。
「大きな反響を得る記事をどれだけ書いてきたか」「書いてきた文章を気に入ってもらい『次はどんな記事を書いてもらえるのか』と期待されるものになっているか」という点が優れているライターは「何も実績はないけど文章は書ける」という人と比べれば、仕事の依頼側の視点からはずっとライターとしての魅力が見えてくるわけです。
その意味では極端な話、「ライターもタレントになるべき」という考えもあるのではないかと思います。記事を読まれる方の反応を見たり、時には意見を交わしてみたり、といった活動を地道に行われることをお勧めします。近年はSNSの利用が発達していることもあり、これを活用しない手はありません。
また自分で書いたコンテンツを積極的に告知したり、自身の考えを適宜発表してみたり、あるいは逆に告知への反応を確認し自身の実績に対する第三者の反応を参考にしたりと、自身のスキルアップにつながるポイントはたくさんあります。
注意として、多くの反応が得られるようになってくると「否定的な意見」、あるいは「行き過ぎた誹謗中傷」などが投稿されてくることが予想されます。これは多くの目にさらされてくることを考えると避けられないものであるともいえますが、やはりそれを見る側としては精神的にこたえてきます。しかし必要な指摘は自身のスキルアップに生かす一方で、明らかな「嫌がらせ」は軽く受け流せるように、慣れていくことも重要なステップアップの一つであるといえるでしょう。
なお、この内容はライター業をフリーランスとして活動している、あるいはその前提を考えられている人に対してのものになります。どこかの組織に属して仕事をする場合には事情が変わってくることもあります。また仕事の依頼先によってはそのような行為を嫌がったり、あるいは守秘義務契約などに引っかかってくることも考えられますので、コンテンツ公開の個人発信が問題ないかどうか、事前に先方に確認するなどして十分注意するようにしましょう。
ネタをひねり出す力を鍛える一つの例:ラジオ番組を有効活用する
ライターの実力は、ここぞというときに出てくるお題に対して、その人ならではの興味を引くネタ、文章がパッと頭に思い浮かぶ、その瞬発力がモノを言います。イメージとしてはある意味「大喜利」のようなシチュエーションではないでしょうか。
ところが単に専門的な知識だけを追っていると、わりに「専門分野のトレンド」ばかりに目が行き、こうした「瞬時にネタをひねり出す力」はついてこないものであります。
この力を養う一つの手として「ラジオのバラエティー番組」を有効活用する方法が考えられます。
ラジオバラエティーはこんな感じ:投稿を有効活用する
ラジオにおけるバラエティー番組の多くは、リスナーに対して「お題を最初に発表」「そのお題に対する投稿を活用して番組を進める」といったものが多く放送されています。お題の傾向は時事ネタなどに従ったモノや番組、パーソナリティーそれぞれの特質などもありさまざまです。
この番組に対して「読まれる」ことを意識して投稿を行うのは、相当にコンテンツ発想の瞬発力が鍛えられるといえます。
「面白い」と思うネタだけでは、必ずしも読まれるとは限りません。ネタをどんな文章、形式で伝えるのか?「通り一辺倒のストレートな表現」が読まれやすいのか?あるいは「とんでもない変化球」を放ったほうがいいのか?「長い、あるいは短い」ほうがいいのか?それは番組のカラーやパーソナリティーの性格などによっても変わるわけで、そこには自分の仕事を進める前に「相手の出方を探る」という洞察力も鍛えていかれるわけです。
他人の投稿はよい参考書
番組の種類や投稿回数を増やしていくことで実力もついてくると思いますが、最初はあれこれと挑戦するのは避け、まずは「これならできそうだ」という番組からチャレンジし、少しずつ傾向を読みながら経験を積んでいくとよいでしょう。
また自分以外の投稿に耳を傾けるのも、よい勉強になります。常連の投稿者となると、そのラジオネームを聞いてる側も覚えてしまうほど。その人の投稿がなぜ読まれるのか?それを研究することは、自分の引き出しを増やす効果もあるかと思われます。
ラジオはテレビなどと異なり、言葉のみで表現されるメディアでありかつ即効的な要素も強いため、番組を作る側、聴く側、そして投稿する側ともに「出だしのきっかけをひねり出す力」「反応する」力が要求されます。その意味ではライターの実力を形作るうえで活用できる可能性はいろいろとあるといえるでしょう。