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バンドエイド、U.S.A.フォーアフリカ…80’sを彩ったさまざまなチャリティーソングを振り返る

ライフワーク
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70年代後半~80年代はイギリスよりパンクを発端としたニューウェーブ/ニューロマンティックの勃興、そしてMTVをきっかけにその影響が世界的に広がった「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれるムーブメントを中心に、強烈な個性をもったアーティストが続々と登場しました。

それゆえにこの時期に登場したポップ/ロックミュージックは、特に「80’sミュージック」と呼ばれるカテゴライズで呼ばれており、今日でも広く知られた存在であります。

その80’sミュージックの中でも強い印象を残しているのが、チャリティーソング。アーティストの垣根を超え、レーベルを超え、一つの歌をトップクラスのスーパースターが集い歌ったこの時代のチャリティーソングは、さまざまな場面で今なお多くの人に親しまれています。

今回はこのチャリティーソングの数々を紹介するとともに、この時代にそのチャリティーソングが生まれた意味を考察してみたいと思います。

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バンド・エイド「Do they know it”s Christmas?」


バンド・エイドは1984年にアフリカ・エチオピアで発生した飢饉の惨事を受け、アイルランドのシンガーソングライターであるボブ・ゲルドフが発起人となり、当時イギリス・アイルランド両国のトップミュージシャンが集まり結成されたチャリティー・プロジェクト。

曲はゲルドフと、イギリスのミュージシャンであるミッジ・ユーロにより作られました。

「Do they know it”s Christmas?」=「彼らはクリスマスを知っているのだろうか?」というタイトルのこの曲は、プロジェクトを単なるチャリティー活動として終わらせず、世界に向けて浮上に深い疑問を投げかけます。

もちろん歌詞に描かれるストーリーは、人々に「彼らに救いの手を差し伸べよう」と呼びかける肯定的な展開でありますが、このタイトルが繰り返し唱えられることで、音楽がチャリティーに参加する意義を深いものにしているようにも感じられ、音楽でこそできることを明示しているようでもあります。

なおこのプロジェクトは1989年にバンド・エイドII、2004年にはバンド・エイド20と、陣容を刷新して再発起されており、それぞれのメンバーで「Do they know it”s Christmas?」もリメイクされました。さらに2014年にはエボラ出血熱の支援を目的にバンド・エイド 30として新たなプロジェクトが発起されました。



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U.S.A.フォーアフリカ「We Are the World」

バンド・エイド・プロジェクトの始動を受け、1985年にアメリカの歌手であるハリー・ベラフォンテの提唱よりプロジェクトが始動、ライオネル・リッチーやマイケルジャクソン、スティービー・ワンダー、クインシー・ジョーンズらを中心に当時アメリカで人気を誇っていたミュージシャンが集い結成されたU.S.A.フォーアフリカ。曲はジャクソンとリッチーの共作によるものです。

歌詞としては「Do they know it”s Christmas?」のように、いきなり痛烈なメッセージを突き付けてくるものではなく、「ともに助け合いましょう」といった感じの、前向きで優しいイメージ


ちなみにジャクソンの曲「Heal The World」は、この曲に似ているとよくいわれていますが、内容としては同じくポジティブな方向ながら「争いを止め、ともに歩もう」といった少し視点の異なるテーマを取り上げたものとなっており、二つを比較すれば、彼が音楽で描きたかったテーマの一つも考えさせられることでしょう。

またこの曲は、2010年に発生したハイチ地震による被災者支援として立ち上がったプロジェクトにて、新たなメンバーにより「We Are the World 25 Years for Haiti」として再度レコーディング、発表されました。

Band fur Afrika「Nackt im Wind 」


1985年にドイツの歌手、ヘルベルト・グレーネマイヤーの呼びかけによりドイツ国内の人気アーティストが集結しプロジェクトが始動したBand fur Afrika(正式表記は”u”にウムラウト表記)。曲はグレーネマイヤーが作曲、ミュージシャンのヴォルフガング・ニーデッケンが作詞を担当しました。

「Nackt im Wind」とはドイツ語で、訳すると「風の中に裸で」といった意味でしょうか。曲調からして「Do they know it”s Christmas?」「We Are the World」とも違い、マイナー調の暗い雰囲気にシンガーの歌がそれぞれ痛烈な叫びのようにも聞こえてきます。

こうした空気感を「ドイツ的だ…」とおっしゃる方もいるとか。その雰囲気がお国柄と言い切れるかどうかは明言できないところではあるものの、チャリティーソングとして独特の、一つの個性を示しているのは印象的でもあります。

表現的にはダイレクトに「飢餓救済は我々の使命である」と言い切るような、真摯な気持ちが感じられるところであり、プロジェクトの目標に対する真面目さ、真剣さを強く感じられる曲であるといえるでしょう。

ヒア・アンド・エイド「STARS」


1985年に立ち上がったプロジェクト、ヒア・アンド・エイド。これは前出の三つのプロジェクトとは異なり、国単位の集まりではなくハードロック、ヘヴィーメタルという音楽ジャンルで活躍する人気アーティストが集結して発足しました。

このプロジェクトをまとめたのは、ヘヴィーメタルバンド、ディオのボーカリストであったロニー・ジェイムズ・ディオで、彼は「STARS」の作詞も担当しました。作曲は同じくディオのメンバーとして活躍していたヴィヴィアン・キャンベル、ジミー・ベイン

曲としてはストレートなチャリティーソングではありますが、なにしろパワフルなヘヴィーメタルサウンド。ボーカリスト一人一人の歌声も強烈な叫びで聴く人の心を直撃してきます。

腹に響いてきそうなビートと地響きのようなリフ、そして体育会的に押しまくるボーカルのメロディーは、聴く人を力強く後押ししてくれるような、頼りがいのある空気感をおぼえることでしょう

さらにこの曲の聴きどころは、途中に挟まれる11人のギタリストによるギターソロのリレー

80年代はロックギターの変革期ともいわれており、強烈な印象を放つスーパーテクニックを披露するロックギタリストがたくさん登場した時期でもありましたが、その中においてもトップの人気を誇ったアーティストがここに集結、目を見張るようなギターテクニックを競う合うように披露しており、ロックギター好きは必聴のナンバーでもあります。

またこのギターソロリレーに触発されてか、曲はハードロック/ヘヴィーメタルミュージシャン界からも「ヘヴィーメタルの金字塔的ナンバー」の一曲ともされており、まるで競うように世界中でそのカバーが披露されています。




Artists United Against Apartheid「SUN CITY」


1985年に立ち上がったArtists United Against Apartheidは前出のチャリティーソングとは異なり、その名の通りアパルトヘイト(1948年~1990年代初めに南アフリカで施行されていた人種隔離差別制度)に対する抗議をおこなうために始動したプロジェクト。

アメリカのロックシンガー、ブルース・スプリングスティーン(『U.S.A.フォーアフリカ』にも参加)のバックバンドであるEストリートバンドメンバーのギタリスト、スティーヴ・ヴァン・ザントの提唱によって発足しました。

プロジェクトにはスプリングスティーンのほかにバンド・エイドに参加したU2ボノも登場。さらには「ジャズ界の帝王」として世界的に知られるJazzトランぺッターのマイルス・デイビスも参加しており、MVの冒頭で「帝王」を感じさせる印象的なトランペットフレーズを聴かせています。

リズミカルでグルービーなビートとサウンド、そしてアクティブな空気感に力強いボーカルと、聴いていると思わず体が動いてしまいそうな曲ですが、コーラスで皆が揃って叫ぶのは「I, I, I, I, I, I Ain’t gonna play sun city(俺はサンシティなんかで演るもんか)」というミュージシャンたちの痛烈な声。

チャリティーと呼ぶには違和感をおぼえるかもしれませんが、「音楽という表現を通して社会に影響を及ぼす」という行為の、特徴的な一つの例を感じられるものでもあります

チャリティーソングに対する考察

80年代を象徴したチャリティーソング


タイトルにて今回紹介する曲を「80’s」とくくりましたが、実は1984年の「Do they know it’s Christmas?」が発端で、その他の曲は全て1985年に発表されたものばかり。

しかもArtists United Against Apartheid以外はバンド・エイドの活動に直接、あるいは間接的にも影響を受け発足したもの。Artists United Against Apartheidについてもブルース、スプリングスティーンやボノらの参加など、多少なりともプロジェクトの影響は感じられるものであります。

また1985年にはボブ・ゲルドフが発起人となり、世界的な音楽チャリティーイベント「ライブエイド」がおこなわれ、「Do they know it”s Christmas?」「We Are the World」「Nackt im Wind 」はそれぞれライブにて披露されていることからも、バンド・エイドの活動が大きく影響していることが分かるでしょう。

その意味でバンド・エイドを発端としたこの音楽は、この80’sミュージックを最も象徴するイメージであると見ることもできるとともに、この時期の音楽のもつ影響力が、登場によりピークを迎えたことを示しているとも考えられます

チャリティーソングの行方やいかに


一方、これらの活動にはアフリカというさまざまに問題を抱えた国に対しての関心を広めるという共通の指針がありました。この活動以降、世界的にこれほど目立ったチャリティーソングやプロジェクトは登場していません。

そこには、これらの歌が残ることで「音楽のチャリティーに対する意識の基盤がなされた」と見ることができるかもしれません。あるいは逆に、新たなチャリティーへの意思が生まれてきていないというネガティブな方向も考えられます。さらには当時のアフリカ救済というターゲットと比べると、現在は世界的にもっと多くの問題が露呈してきているという見方もあったり、あるいはチャリティーという形も多様化しているために世界的な見え方も変わっていたりと、さまざまな要因が考えられるところであります。

このような状況が、果たして世界に対してポジティブな方向に進んでいるのか、あるいは危機的状況にあるのかを一概に判断することは難しいところではありますが、今回紹介した曲の数々は「音楽が力をもって何らかの行動を起こすことができる」ということを示した例であることは間違いありません。

このような現象、そして現在に至るまでの経緯を踏まえつつ、社会的な問題と音楽というジャンルの関係を見つめていくことは、チャリティーを考えていく上で今後においても非常に重要な観点の一つであるとも考えられます。

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