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映画『そして、アイヌ』 文化が社会で生きる上で必要なことをアイヌ民族の歴史より想起させる物語

生きづらさを抱えて
(C)大宮映像製作所
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現代に生きるアイヌ民族の文化、歴史とともに彼らの今を追ったドキュメンタリー映画『そして、アイヌ』が全国順次公開されます。

本作はアイヌ民族の歴史とともに、彼らに対し今なお残る差別や偏見への問いかけとともに、新たな世代へ継承される文化や思いを綴ったドキュメンタリー。

東京・新宿のコリア・タウンに存在する一軒のアイヌ郷土料理の様子を中心にアイヌ文化のさまざまな側面を追い、見る者にルーツ、文化、人権といったさまざまな問題、課題を想起させる作品です。

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映画『そして、アイヌ』とは

作品概要

(C)大宮映像製作所

東京・大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」の店主でアイヌ文化アドバイザーの宇佐照代さんの日常や生い立ちなどを中心に、アイヌ文化の今を映し出したドキュメンタリー。

『ただいま それぞれの居場所』『ケアを紡いで』などのドキュメンタリーを手がけてきた大宮浩一監督が作品を手がけました。

製作年:2024年(日本映画)
監督・企画:大宮浩一
出演:宇佐照代、宇井眞紀子、黄秀彦、太田昌国、平田篤史、奈良美智、関根美子、表美智子、ルイ、HIROほか
配給:東風

あらすじ

(C)大宮映像製作所

アイヌ文化アドバイザーとして舞踊や楽器演奏などの伝承活動も行っている宇佐照代さんは、現在、新宿・大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」の店主を務めている女性。

幼いころから生まれ育った釧路を離れ、母や5人の兄弟、姉妹と東京にやって来た宇佐さんは、長年にわたり関東在住アイヌの居場所づくりに奔走してきた照代さんの祖母や母の思いを継いで2011年に母とともに「ハルコロ」を開業しました。

このドキュメンタリーでは、そんな宇佐さんの日常や思いなどをはじめとして曽祖母から子に至るまでの家族の歴史を、美術作家・奈良美智、評論家・太田昌国、写真家・宇井眞紀子らアイヌと出会った人々の活動、思いと並行して追い、文化の継承、民族というアイデンティティー、多様性、人権といったキーワードにまつわる課題をあぶりだしていきます。

アイヌ民族の歴史を通して見える、文化の生きる道

(C)大宮映像製作所

物語は宇佐照代さんの「ハルコロ」におけるビジュアル的イメージ、「今という時代に存在するアイヌ民族」のイメージより幕を開けます。

国内外から多様なルーツを持った人が訪れるこの店内では、人々がアイヌの郷土料理を楽しむとともにアイヌ文化に対する強い興味を抱き、そして多くの強い共感をおぼえる様子が描かれます。

その光景は、アイヌ民族というルーツを持った人々が苦しみながら現代にいたるまでの間に生きてきた意味を感じさせるとともに、さまざまな差別を受けてきたという歴史に改めて疑問を投げかけています。

そして宇佐さんをはじめ人々が伝え続けているアイヌ民族の文化は、改めて差別を受けるような、良し悪しで判断されるものではないということを考えさせられるものであります。

(C)大宮映像製作所

また「ハルコロ」の存在する大久保という場所は、人種、人権、アイデンティーといった課題を考える上で重要な場所でもあります。

本作ではアイヌ民族というステータスにスポットを当てる上で、並行して幼きころから「在日」と呼ばれ差別を受けた経歴を持つ人々にも言及しています。

日本有数のコリア・タウンが存在する大久保。近年はK-POPや韓流ドラマなどのブームで日本の人気観光スポットの一つとなった街ですが、一方で古くから在日韓国人、在日朝鮮人というステータスを持つ人たちはまたアイヌ民族同様にいわれのない差別に苦しみ続けており、非常に接点を感じるものとなっています。

興味深いのは、現世代の人たちが幼いころから差別を受けているという実感はありながら、その理由を明確には理解できないということ。時代とともに、その過去の闇のような歴史の印象は薄れ、今改めてアイヌ民族の文化にスポットが当てられていることは、彼らの生きづらさという点を社会課題の中にあるポイントの一つであると、考える必要性をおぼえてくるでしょう。

(C)大宮映像製作所

また本編では終盤に映し出される子供たちの姿が非常に印象的であります。

現代日本の文化を自分なりに楽しみながらしっかりとアイヌの文化を受け継ぎ、自身の人生を歩んでいく姿はまさに「望まれた姿」を示しているかのよう。

全ての人がポジティブな方向性を感じさせる、前向きな生き方をできるように、目指すべきものはなにか?本作はアイヌ民族という一つのアイデンティティーを考えさせるとともに、さらに普遍的かつグローバルな社会課題を考えさせるものとなっています。

ちなみに2023年に公開された映画『カムイのうた』はアイヌ民族の口頭伝承による文化の一つである叙事詩『ユーカラ』を『アイヌ神謡集』として日本語に訳した、アイヌ民族であり言語学者・知里幸恵の生涯を基に描いたドラマ。

この作品では主人公の生涯をベースとして、アイヌ民族への差別の歴史と、対照的に彼らの文化の尊さをドラマとして描いています。機会があれば、本作と合わせて鑑賞すると、本作のメッセージをより深く感じ取ることができるでしょう。

映画『そして、アイヌ』は2025年3月15日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次上映

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