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「世界は良くなっている」という偽善。自分の生活すら苦しいのに、なぜ他人の希望を信じられるのか?

生きづらさを抱えて
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「世界は良くなっている」という偽善。自分の生活すら苦しいのに、なぜ他人の希望を信じられるのか?

最近、SNSやニュースで「世界はかつてないほど豊かになった」という言葉を耳にしませんか? 正直に言って、今の日本で「明日の電気代や食料品の値上げ」に頭を抱えている私たちにとって、それはどこか遠い国の、無責任な「偽善」のように聞こえます。

私たちの給料は上がらず、少子高齢化で将来の不安ばかりが募る。そんな中で「人類は進歩した」と言われても、「じゃあ、私のこの苦しさは何なんだ?」と問い返したくなるのは当然の感情です。

しかし、歴史と数値を可視化する調査グループ「Our World in Data」が提示するデータは、私たちに別の視点を突きつけます。彼らはこう言います。

「世界ははるかによくなった。しかし、世界は依然としてひどい状態にあり、そして、世界はもっとよくなることができる」

この一見すると矛盾した、そして私たちの感情を逆なでするような「3つの真実」について、冷徹なエビデンスから目を逸らさずに考えてみましょう。


1. 「1分間に10人」という、見えない惨劇

私たちが自分の生活に精一杯で、他人のことなど構っていられないと感じている今この瞬間も、残酷な事実は進行しています。

世界では、今この段落を読み終えるまでの1分間に、10人の子供たちが5歳の誕生日を迎えることなく命を落としています。これは1時間ごとに、子供だけを乗せた大型ジャンボジェット機が墜落しているのと同じ規模の悲劇です。

私たちが「日本はもうダメだ」と嘆いている一方で、世界には「生きることそのもの」が絶望的な格差の中に置かれている人々がいます。高所得国では子供の生存率は99.8%に達しますが、最貧国では10人に1人が亡くなるという、文字通り「生まれた場所」が命の選別を行っている現実があるのです。

不衛生な水が原因で、毎年100万人以上が命を落としています。低所得国における汚染水による死亡率は、高所得国の1000倍以上です。データはこの惨劇が地理的な不運ではなく、純粋な「インフラと経済の欠如」という人災であることを証明しています。

ただ、そんなこと言われても・・・何もできないことがほとんどです。


2. 84%が直面する「貧困のリアル」

「世界から貧困は減った」という主張も、私たちの耳には空虚に響きます。確かに、1日2.15ドル未満で暮らす極端な貧困は、200年前の75%から現在は10%以下へと劇的に減少しました。

しかし、ここからが「偽善」の皮を剥いだ後の、より厳しい現実です。

先進国の基準に近い「1日30ドル(約4,500円)」というラインで世界を見渡すと、世界人口の84%、実に67億人が依然として貧困状態にあります。つまり、世界で「まともな生活」を送れているのは、わずか16%に過ぎません。

日本に住む私たちの多くが「生活が苦しい」と感じるのは、この16%という狭い枠の中で、さらに相対的な格差に晒されているからです。私たちが感じる「生きづらさ」は、データ上でも決して気のせいではありません。

一方で、歴史を振り返れば、私たちが当たり前に享受している「読み書きができる(識字率90%)」「50歳を超えても生きられる(平均寿命73歳)」という状態は、かつての王侯貴族すら手に入れられなかった、人類史上稀に見る奇跡の恩恵であることも事実なのです。


3. 私たちは「もっとよくできる」という戦略的希望

「世界は良くなっている」という言葉が偽善に聞こえるのは、それが「今の苦しみ」を無視して、過去との比較だけで満足しろと言っているように感じるからでしょう。

しかし、Our World in Dataが説く希望は、そんな能天気なものではありません。それは「データに基づいた戦略」です。

健康への介入:駆虫薬の配布や栄養改善といった安価な対策だけで、子供の登校率は劇的に上がり、将来の所得向上につながることが証明されています。

女性の教育:女性が教育を受け、子供の生存率が上がると、家族は自然と子供の数ではなく教育の質を重視するようになり、人口増加に歯止めがかかります。

エネルギーの真実:大気が反応するのは低炭素のシェアではなく、燃やされた化石燃料の絶対量です。私たちは依然として、毎年これまで以上に多くの化石燃料を燃やし続けています。

この「絶望的なデータ」を知ることは、私たちを不安にさせます。しかし同時に、「どこに注力すれば解決できるか」という地図を私たちに与えてくれます。


あなたの「違和感」を力に変える

自分の生活が苦しい時に、他人の幸福を願うのは難しいことです。しかし、私たちが感じる「世界が良くなっているなんて嘘だ」という違和感こそが、実は世界をより良くするための出発点になります。

現状に満足してしまえば、1分間に10人の子供が死ぬ世界を容認することになります。逆に、絶望して投げ出してしまえば、先人たちが築き上げてきた成果を捨て去ることになります。

私たちは、「世界はひどい状態だが、良くなってきている。そして、私たちの選択次第でもっと良くできる」という、針の穴を通すような細い道を歩まなければなりません。

世界を救うのは、美しい言葉ではありません。冷徹なデータに基づき、自分の痛みを知る人が、それでも他人の痛みのために動く。その一歩が、歴史の針をより良い未来へと進める唯一の力になるのです。


番外編:Our World In Dataは「怪しい」組織なのか?

「世界が良くなっているなんて、苦しい生活を送る私たちへの当てこすりではないか?」

そうした疑問を抱くのは、情報の荒波に揉まれる現代人として至極まっとうな反応です。

結論から言えば、OWIDはオックスフォード大学を拠点とする調査研究グループです。彼らの最大の特徴は、「透明性」への異様なまでのこだわりにあります。

データの出所:国連、世界銀行、WHOなどの国際機関が公開している膨大なデータを集計・可視化しています。

オープンアクセス:すべてのデータは公開されており、誰でもその計算根拠を検証し、批判できるようになっています。

彼らが「世界は良くなっている」と主張するのは、楽観主義を広めるためではありません。むしろ、「解決策がある問題で、今なお多くの命が失われている」という残酷な現実を浮き彫りにするためなのです。

あなたが抱いた「怪しい」という直感。それは、不完全な世界に対して抱く正当な怒りかもしれません。そのエネルギーを、冷徹なデータに基づいた確実な一歩へと変換すること。それこそが、情報を読み解く姿勢の真髄と言えるでしょう。

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