第二回となる『「フェミニズム」を感じさせる映画セレクト』。
今回は「フェミニズム」「女性」というキーワードの中でも、特に「少女」、若い年齢層の女性をフィーチャーした作品二編を紹介します。
日本国内では2005年にアイドルグループAKB48が登場、その存在はアイドルというジャンルに限らず音楽、若年層のライフスタイルなど多岐にわたって社会的に大きな影響を与えました。
ここで注目したいのは、いわゆる「少女」「ガールズ」といった特定の年代における主張を強くアピールしている点。
登場当初はやはり、可憐さ、キュートなイメージなどといった、いわゆるアイドルという特性を前面に出したアピールがメインでありました。しかしグループの誕生から年を経るごとにその表現イメージは広がりを見せ、類似系列のグループとして登場した欅坂46ではさらに「少女の主張」的なイメージを強くアピールするようになるなど、さまざまな広がりを見せています。
そしてこの時期以降、映画でもさまざまにこの流れを踏襲した作品が発表されており、特に海外作品で「ガーリー」「ガールズ」という視点で描かれた作品は、社会的な流れの新たな潮流を感じさせるものといえるでしょう。
それまでの作品はドラマ『ビバリーヒルズ青春白書』のような、どちらかというと閉ざされた関係の中にある「少女」たちの普遍的な姿を描いたものでありましたが、2000年を過ぎた近年に描かれた作品では、その枠を超えるようなパワーを見せる作品も多く排出されています。また作品によってはその日本の「Kawaii」的な文化の影響を感じられるものもあり、非常に興味深いポイントを持っています。
『エンジェルウォーズ』
作品概要
精神病棟に閉じ込められた少女が、現実から逃避するために自身の精神世界に描いたバーチャル世界で、仲間たちと自由を勝ち取るための戦いに挑んでいく姿を描いたアクションストーリー。
『300 スリーハンドレッド』『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督が作品を手がけました。また『レジェンド 狂気の美学』『ポンペイ』『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』などのエミリー・ブラウニングがヒロインを務めたほか『ハンガー・ゲーム』シリーズ、『プライドと偏見』などのジェナ・マローン、『バッドボーイズ』シリーズ、『マティーチェ・キルズ』などのバネッサ・ハジェンズ、『アサシンハント』『ジオ・ストーム』などのアビー・コーニッシュ、『ハングオーバー』シリーズ、『シン・シティ 復讐の女神』などのジェイミー・チャンら当時若手の実力派女優が名を連ねています。
公開年:2011年(アメリカ映画)
原題:Sucker Punch
配給:ワーナー・ブラザース映画
運命に果敢に挑む可憐な「少女」たちの姿
登場する人物の年齢層からは「ガールズ」というコンセプトが強く感じられる本作。戦いに身を投じるヒロインのビジュアルには、海外の映像ではあまり見ることのなかった「戦う美少女」的なイメージが強く感じられ、そのビジュアルにはある意味日本の「Kawaii」文化的な影響も見えてきます。
社会的な力として弱い立場にある女性、そしてその中でもさらに弱い立場である「少女」というステータスでありますが、あるところでまさに虐げられながら、精神世界で果敢に自身の運命と立ち向かっていく姿が本作では描かれています。
戦いの場面は決して可憐、美しさといったイメージだけでなく、生々しく凄惨な場面も余すところなく描写されており、単なるアクション作品というよりも何らかの強いメッセージを感じる作品であるといえます。
物語はハッピーエンドとはならないものの、ラストシーンの余韻には主人公を中心とした若い女性たちの強い意志も感じ取れ、「少女」というステータスに対する社会的認識に言及した製作側の意思のようなものも感じられるでしょう。
『コンビニ・ウォーズ~バイトJKvsミニナチ軍団』
作品概要
カナダに住む二人のさえない女子高生が、アルバイト先のコンビニに密かに隠れていたというナチの残党と闘うという奇想天外な顛末を描いたホラーコメディー。
『チェイシング・エイミー』『クラークス』などのケビン・スミスが監督・脚本を担当しました。主演にはジョニー・デップとバネッサ・パラディの娘であるリリー=ローズ・デップ。また本作にはジョニー・デップも出演しており、父娘共演を果たしました。
もう一人の主演を、スミス監督の実娘であり『Mr.タスク』にも出演したハーレイ・クイン・スミスが担当。本作は『Mr.タスク』に登場した二人のキャラクターに焦点を当てたスピンオフ作品でもあります。
公開年:2016年(アメリカ映画)
原題:Yoga Hosers
配給:パルコ、ハピネット
まさにガールズパワー!少女たちの強気が見せる「ガールズの隆盛」
『Mr.タスク』でほんのチョイ役、コンビニ店員役として登場した二人が、この物語では主人公として物語を描いていきます。
どちらかというとコメディーテイストで描かれた本作。人によってはそれほど強い印象をおぼえない、単なるB級コメディーと取られる可能性もありますが、逆にそのポップで明るいイメージは作品からにじみ出る「ガールズ」支持的な印象を強め、さえない女子高生の存在感をより強いものとしています。
「カナダのとある町に生存していたナチの残党に立ち向かう女子高生二人」というコンセプトは一見奇想天外でありますが、一方で新たに台頭する人たちが、既得権益に対抗していくイメージを象徴しているようでもあり、まさに「ガールズの台頭」という構図も見えてくることでしょう。ラストには二人がパンク調でカナダの国家「O Canada」を歌うシーンがあるなど、カナダという国を要所でアピールしている点にも注目です。
ちなみに主人公の二人が物語の冒頭で歌っているのは、この曲。ヘヴィー・メタルバンドANTHRAXの「I’m the Man」という曲です。
このタイトルにある「the Man」という言葉の意味は、英語のスラングで「大物」の意を示しているといわれています。つまり「権力を振りかざすボス」的な存在。
この曲を主人公の二人が「I’m the Man!」叫びながらはつらつと楽しそうに歌っている姿は非常に印象的でもあり、まさに作品の持つ「ガールズパワー炸裂」的イメージを象徴しているようでもあります。